部下からの「わかりました」は、本当に“わかった”を意味しているのでしょうか。上司は伝えたつもりでも、部下は要点を理解できていない。あるいは曖昧な指示に、 何をすべきか迷っている――。こうした“認識のズレ”が、部下の成長を妨げる最大の壁となっているのかもしれません。本記事では、野本果甫氏の著書『人材育成はフィードバックが9割 部下が自走して成果を出すリーダーシップの在り方』(ごきげんビジネス出版)より、部下への効果的なフィードバック方法を紹介します。
そこまで言わないとわからないのか…Z世代部下への指示「なるべく早めに提出して」→「きょうの18時までに提出して」死ぬほど丁寧に伝えなきゃいけない理由 (※画像はイメージです/PIXTA)

話が長い、またはフィードバックすることが多すぎて要点がぼやけている

熱心なリーダーに多いのですが、情報量が多すぎて、フィードバックがおわったとき、結局何がいちばん大事なことか部下は整理できていないことがあります。

 

人が一度に記憶できるのは基本3つまでです。それ以上伝えたい場合は、メモをとらせる、フィードバックしたあとに優先順位を明確にする、などの工夫が必要になります。

 

上司が一方的に話すのも記憶に残りにくいです。途中で「ここまでで質問はないですか?」「いま説明したことで大事なことは何だと思いましたか?」など、双方向の会話が効果的でしょう。フィードバックはコーチング式対話が基本である理由のひとつは、双方向の会話は記憶に残りやすいからです。

曖昧表現を使っている

フィードバックをするときにあわせて「〜〜してほしい」とリクエストすることがあります。そのときの曖昧表現として「もっと感じよく接客してほしい」「なるべく早めに対応してほしい」「丁寧に仕事してほしい」「わかりやすい説明をしてほしい」などがあります。曖昧表現だと具体的に何をどう変えたらよいかがわからないため、行動変容にはつながりません。しかし意外と多くのリーダーが使っています。わからないのに「わかりました」と答える部下もいますので、余計認識があわないままになっているケースも見られます。

 

実際にあったことですが、商品の注文を受けるコールセンターで、オペレーターがお客さまの話を最後まで聞かずに「申し訳ございませんが、品切れでございます」と断っているのを聞いて、リーダーが「もっとお客さまに寄り添った対応をしてほしい」と指導しました。

 

ところが、その後も同じことが続くので再度同じことを伝えたところ「お客さまに寄り添ってと言われたので、お客さまに対してやさしい口調で話すようにしています」と的外れな回答が返ってきたそうです。リーダーとしては、断るだけでなく、代替となる商品を提案するなどの配慮をしてほしかったそうですが、「寄り添った対応」だけでは伝わらなかった例ですね。

 

先に述べた表現も次のように具体的に伝える必要があります。

 

「もっと感じよく接客してほしい」→「最初のあいさつは笑顔でお客さまの目を見て行ってほしい」

 

「なるべく早めに提出してほしい」→「きょうの18時までに提出してほしい」

 

「丁寧に仕事してほしい」→「入力したあとミスが発生しないよう必ずWチェックしてほしい」

 

「わかりやすい説明をしてほしい」→「専門用語の〇〇は、お客さまにわかるように〇〇と言い換えて説明してほしい」