高齢化が進む日本において、「老後の資金」と「子どもとの関係」は、多くの人にとって切実な問題です。内閣府の調査でも高齢者の単独世帯は増加しており、親子関係も多様化しています。もし、大切な老後の資金を我が子から無心されたら……そのような選択に迫られた80歳の女性。長年にわたり息子の要求に応じた先に待っていたのは?
もう結構です…〈年金15万円〉80歳母、半年ぶりの面会で金の無心をする息子にブチ切れ。孤独なはずの「老人ホーム」で手にした「資産3,000万円」と自由な暮らし (※写真はイメージです/PIXTA)

鳴らない電話…安堵と寂しさが入り混じる日々

鈴木良子さん(80歳・仮名)が暮らす介護付き有料老人ホームの窓からは、手入れの行き届いた庭園が見渡せます。季節の花々が咲き誇り、散策路では入居者たちが談笑しながら穏やかな時間を過ごしています。良子さんがこのホームに入居して、3年の月日が経ちます。

 

10年前に夫を亡くし、都内の持ち家で一人暮らしを続けていましたが、足腰の衰えとともに将来への不安が大きくなり、自らの意思で入居を決めました。彼女の年金は手取りで月15万円。決して裕福ではありませんが、ホームの費用は年金と貯蓄で十分に賄えています。

 

「ここでの暮らしは快適ですよ。三食昼寝付きなんて言ったら罰が当たりますけど、栄養バランスの考えられた食事は美味しいですし、何より話し相手がいるのが一番です」

 

そう言って朗らかに笑う良子さん。書道やコーラスといったサークル活動にも積極的に参加し、新たな友人もできました。しかし、その笑顔の裏には、一人息子である健一さん(52歳・仮名)との間に横たわる、長年の確執がありました。最後に健一さんから連絡があったのは半年前のこと。それ以来、電話一本かかってこないとか。そのため、何とも言えない孤独感を覚えながら毎日を過ごしていたといいます。

 

良子さんの夫が遺した退職金は、健一さんが「事業を始めたい」と言った時に、そのほとんどを渡してしまいました。しかし、事業は早々に頓挫。その後も「取引先への支払いが」「従業員の給料が」と、何かにつけてお金を無心に来るのが常態化していました。

 

内閣府『令和6年版高齢社会白書』によると、65歳以上の高齢者のいる世帯のうち、「単独世帯」と「夫婦のみの世帯」を合わせた割合は6割を超えており、良子さんのように一人で暮らす高齢者は決して珍しくありません。しかし、子どもとの関係性については、家庭ごとに大きな違いがあります。良子さんの場合、息子との関係は「金の切れ目が縁の切れ目」に近い、寂しいものでした。

 

「あの子が訪ねてくるときは、いつもお金の話ばかりでしたから。電話が鳴らないということは、お金に困っていないということ。それはそれで、安心できるんです」