「終活」という言葉が身近になり、多くの人が自身の老後に向き合い始めています。特に、信頼できる子どもがいる場合、「あとは任せた」と安心し、資産管理まで託すケースも少なくないでしょう。しかし、その信頼関係に金銭が絡むことで、親子関係は脆くも崩れ去ることがあります。「お母さんのことは俺が最後まで見るから」。その心強い言葉を信じた81歳の母親、その先に待っていたのは、穏やかな老後ではなく、裏切りと深い憎悪でした。
悔しい…〈年金13万円〉81歳母、〈月収50万円〉53歳の息子を信じて「老人ホーム」に入居。お盆でも面会に現れない家族が「海外旅行」と知り、込み上げる憎悪 (※写真はイメージです/PIXTA)

裏切りの海外旅行…憎悪に変わった母の想い

それから1年ほど経ったある日、自宅で転倒し骨折した和子さんは、入院生活を余儀なくされます。これを機に足腰が弱り、ひとり暮らしに不安を感じ始めた矢先、雄一さんから有料老人ホームへの入居を勧められました。「リハビリに集中するための一時的なものだから」との言葉に、和子さんは「息子も私の体を心配してくれているのだ」と素直に受け入れました。

 

しかし、ホームに入居すると、あれほど頻繁だった雄一さんからの連絡は、少しずつ減っていきました。週に1度だった面会は月に1度になり、やがて電話をかけても「忙しい」の一言で切られることが多くなったといいます。

 

そして、ある年のお盆がやってきます。「家族みんなで顔を見せに行く」という電話を最後に、約束の日が過ぎても雄一さん一家は現れません。そんな和子さんの耳に、介護スタッフの何気ない会話が聞こえてきました。

 

「和子さんの息子さんご家族、海外に行っているって」
「写真、SNSにあがっていたわ」
「羨ましいわ、ほんとう」

 

自分との約束を忘れ、家族で海外旅行を楽しんでいた息子家族。そもそも、家族で海外に行けるほど、余裕があるわけがありません。きっと和子さんから預かっているお金を軍資金に、羽を伸ばしているのは明確でした。

 

「信じていたんです。あの子だけは。それが……。愛情を通り越して、憎しみだけが込み上げてきました。そして何より、息子の言葉を鵜呑みにしたいたことに悔しさしかありません」

 

株式会社Speee/「ケアスル 介護」の調査によると、老人ホームの面会頻度として最も多いのは「月1〜3回程度」で40%。家族が入居する老人ホームがどこにあるかで、どれくらい面会に訪れることができるか変わってきます。それでも、全体の7割が少なくても月に1回は面会に訪れているのが実情です。

 

【老人ホーム面会頻度は?】

週3回以上…8.0%

週1~2回…25.2%

月1~3回程度…40.0%

2~3ヵ月に1回…9.2%

3ヵ月~半年に1回…6.0%

半年~1年に1回…8.8%

その他…2.8%

 

「息子家族の家は、同じ東京ですよ。忙しくても月1度くらいは顔を見せに来られる距離なのに……」

 

[参考資料]
株式会社終活のまどぐち/「終活と相続のまどぐち」『65歳以上の男女が、終活の中で最も難しいと感じることは「何から始めればいいかわからないこと」!』
・株式会社Speee/「ケアスル 介護」『どのくらい面会に行く?「ケアスル 介護」にて介護施設の面会頻度や面会理由に関するアンケートを実施』