「終活」という言葉が身近になり、多くの人が自身の老後に向き合い始めています。特に、信頼できる子どもがいる場合、「あとは任せた」と安心し、資産管理まで託すケースも少なくないでしょう。しかし、その信頼関係に金銭が絡むことで、親子関係は脆くも崩れ去ることがあります。「お母さんのことは俺が最後まで見るから」。その心強い言葉を信じた81歳の母親、その先に待っていたのは、穏やかな老後ではなく、裏切りと深い憎悪でした。
悔しい…〈年金13万円〉81歳母、〈月収50万円〉53歳の息子を信じて「老人ホーム」に入居。お盆でも面会に現れない家族が「海外旅行」と知り、込み上げる憎悪 (※写真はイメージです/PIXTA)

息子「お母さんのことは俺が最後まで見るから」と宣言

「まさか、こんな結末になるなんて思ってもいませんでした。自慢の息子だったんですよ、あの子は……」と静かに語り始めた、都内の有料老人ホームで暮らす内藤和子さん(81歳・仮名)。

 

月々の年金は13万円ほど。決して余裕のある暮らしではありませんでしたが、倹約を重ね、夫が遺した資産を守りながら堅実に生活していました。変化が訪れたのは3年前。親しい友人が相次いで亡くなったことをきっかけに、和子さんは自身、終活を意識し始めます。

 

株式会社終活のまどぐち/「終活と相続のまどぐち」が65歳以上の男女を対象に行った調査によると、「終活を始めている」という人は43.5%。「終活を始めた、または始めたいと思ったきっかけ」のトップは、「子どもや家族の将来を考えて」で30.5%。「自分への健康状態への不安」(28.7%)、「メディアなどで終活を知ったこと」(19.1%)、「家族や友人・知人の死や病気」(16.6%)と続きます。また「終活を始めるに際して不安に思ったこと」として、最も多かったのが「何から始めればよいかわからない」で36.3%でした。和子さんの場合もそう。

 

「いざ終活を始めようと思っても、何から手をつければいいのかわからなくて。そんなとき息子が『お金まわりのことから始めたら』とアドバイスをしてくれたんです」

 

ひとり息子の雄一さん(53歳・仮名)は和子さんにこう告げたといいます。

 

「言いにくいことだけど、元気なうちにやっておいてくれると助かる。お金の管理は、俺がやるよ。そして、いざというときにきちんと備えておく。お母さんのことは俺が最後まで面倒見るから」

 

都内企業で働く雄一さん。月収は50万円ほどで、ローンの返済や子どもたちの教育費でひーこら言っている姿が目に浮かび、頼るにはしのびないと考えていたといいます。そんな息子が「お母さんのことは最後まで面倒見る」と宣言。「本当に心強かった」と和子さんは振り返ります。こうして、和子さんの終活は、まずは資産の整理を行い、以降のお金の管理はすべて雄一さんに任せることにしたといいます。