離婚、そして再婚。一度手放した当たり前の日常を、もう一度手に入れる選択をしたとき、人は何を思い、どのような覚悟を抱くのでしょうか。それぞれの年代で直面する現実と向き合う視点から、ひとつの人生模様を見ていきます。
う、うそだろ?〈月収55万円〉49歳の再婚男性、36歳の後妻がまさかの妊娠に嬉しい悲鳴。「75歳まで働く」と誓った夜、偽らざる本音 (※写真はイメージです/PIXTA)

〈月収55万円〉養育費7万円……「75歳まで働く」と誓った夜

喜びも束の間、斎藤さんの頭をすぐによぎったのは、現実的な「お金」の問題です。月収55万円。額面だけ見れば十分なように思えますが、税金や社会保険料を引いた手取りは40万円ほど。そこから、前妻の子どもへの養育費7万円が引かれ、手元に残るのは30万円強。順調にいけば、あと3年ほどで、第1子は大学生になります。そうなると、かなりのお金がかかるでしょう。

 

一方、生まれたばかりの子どもが成人するのは、斎藤さんが70歳になるとき。ストレートで大学を卒業したら72歳、大学院まで進んだら……気が遠くなりそうです。

 

ソニー生命保険株式会社『子どもの教育資金に関する調査2024』によると、子ども一人を大学卒業まで育てるのにかかる教育費の平均予想額は1,439万円。これはあくまでも教育費であり、生活費等を含めると……また気が遠くなりそうです。

 

「これまで通り、妻が稼げるとは限らない。私の収入だけで家計を支えることも考えないといけない。養育費の支払いに、生まれたばかりの子どもの教育費、家のローンだってある。考え始めると、目の前が真っ暗になりました」

 

不安で眠れない夜、暗い部屋で一人電卓を叩き続けたという斎藤さん。しかし、絶望だけしていたわけではないといいます。

 

「ふと、テレビで見た元気な高齢者の姿を思い出したんです。最近は70代でも80代でも、バリバリ働いている人がたくさんいるじゃないか、と。どうせ、仕事をしなくなっても、することなんてありません。だったら、働けばいいかと。半分やけくそですよ。でも、やるしかないじゃないですか」

 

そして斎藤さんは美咲さんに宣言。「俺、75歳まで働くよ。だから安心してくれ」。その言葉に、見栄や強がりが一切なかったわけではありません。正直、体力的に持つのか、不安がないといえばウソになるといいます。

 

「誰もが経験できることではないですし。楽しむしかないなと思っています」

 

晩婚化、晩産化が進む現代。斎藤さんのようなケースは、もはや特別なことではないのかもしれません。

 

[参考資料]

裁判所『令和5年司法統計』

ソニー生命保険株式会社『子どもの教育資金に関する調査2024』