離婚、そして再婚。一度手放した当たり前の日常を、もう一度手に入れる選択をしたとき、人は何を思い、どのような覚悟を抱くのでしょうか。それぞれの年代で直面する現実と向き合う視点から、ひとつの人生模様を見ていきます。
う、うそだろ?〈月収55万円〉49歳の再婚男性、36歳の後妻がまさかの妊娠に嬉しい悲鳴。「75歳まで働く」と誓った夜、偽らざる本音 (※写真はイメージです/PIXTA)

49歳で手にした「二度目の春」、まさかの妊娠に揺れる心

中堅企業の営業部長として働く斎藤浩二さん(仮名・49歳)。月収は約55万円。同年代の男性と比較しても、決して低い水準ではありません。しかし、その表情はどこか晴れません。それもそのはず、そこから毎月7万円の養育費が差し引かれているのです。

 

10年連れ添った前妻と離婚したのは7年前のこと。一人息子が小学校2年生のときでした。離婚理由は、よくある性格の不一致。互いに仕事が忙しく、いつしか夫婦の会話は途絶え、家庭内は冷え切っていたといいます。

 

裁判所『令和5年司法統計』によると、離婚調停を申し立てた理由として「性格が合わない」は男性59.9%、女性38.0%。男女で差はあるものの、最も多い理由です。結局、斎藤さんの場合は、息子の親権は元妻が持ち、斎藤さんは月々の養育費と、大学進学の際には学費を援助することを約束しました。

 

「離婚当初は、正直せいせいした気持ちもありました。でも、いざ一人になってみると、その生活はあまりに寂しいものでしたね。特にコロナ禍。誰とも会えず、狭いマンションの部屋で一人、天井を眺めるだけの週末は本当につらかった。もう一度、誰かと食卓を囲むような温かい生活がしたい、と心から思うようになりました」

 

そんな寂しさを友人に吐露した斎藤さん。その友人に勧められるがまま、その場でマッチングアプリに登録。そこで出会ったのが、13歳年下の美咲さん(仮名・36歳)でした。専門職でそれなりの社会的ステータスを得ている女性でしたが、おっとりした雰囲気と、その内に秘めた芯の強さを感じさせるところに惹かれたといいます。そして、将来について語り合うようになりましたが、斎藤さんには、ひとつ懸念がありました。それは、子どものことです。

 

「彼女は初婚ですし、子どもを諦めたわけではないと言っていました。一方、私は前妻との間で不妊治療を経験したんですよ。結局、治療の末に一人授かりましたがかなり苦労しました。自分の年齢も考えれば、そう簡単には子どもができないだろう……結婚する前に、そのことは正直に彼女に伝えました」

 

美咲さんは、斎藤さんの告白を静かに受け止めてくれたといいます。こうして斎藤さんは再婚することに。生涯、ふたりきりの温かな生活――しかし、結婚から半年が過ぎたある夜、事態は急変します。仕事から帰宅した斎藤さんを、美咲さんが真剣な顔で出迎えます。テーブルの上に置かれた妊娠検査薬。そこに示されたのは、くっきりとした陽性の線。斎藤さんは、一瞬、何が起こったのか理解できなかったといいます。

 

「う、うそだろ、と。だって、あんなに苦労したのに、と。驚きと、信じられない気持ちと、そして喜びが一気に押し寄せてきて。感情がぐちゃぐちゃになりました」