信頼で微妙なバランスが保たれている夫婦関係。特にお金の話題は、お互いに聖域になっている場合も。しかし、お互いを思いやるつもりが、いつの間にか「話しにくさ」や「遠慮」となり、思わぬ落とし穴を生むこともあるようです。
信じた私がバカでした…〈月収40万円〉38歳再婚妻の絶望。〈月収48万円〉41歳夫「投資で少しだけ」の嘘、借金「実は800万円…」に唖然 写真はイメージです/PIXTA

借金総額は800万円目前…信頼関係の再構築に向けた険しい道のり

しかし、一度生まれた疑念は、なかなか消し去ることができません。美沙子さんが「本当にそれだけなの?」と改めて問い詰めると、智さんは渋々、別のカードローン会社からも借り入れがあることを白状しました。


「それでもまだ、『合計で50万円くらいだ』と言い張るんです。でも、私の不安はもう頂点に達していました。『すべて正直に話してくれなければ、この先の夫婦関係は考えられない』と伝えると、ようやく重い口を開いたんです」

 

智さんの告白は、美沙子さんの想像を絶するものでした。最初に聞いていた「投資」とは、ハイリスク・ハイリターンで知られるFX(外国為替証拠金取引)のこと。合同会社WOZがFX取引をしている人を対象に行った『FX取引の損切りに関する調査』によると、「FX取引で損切りを何回くらいしたことがあるか」の問いに対して、約9割が1回以上経験しており、11回以上経験している人も約4割いました。また「FX取引で損切りするかどうか判断するのは難しいと思うか」と尋ねたところ、約9割が「とてもそう思う」(54.3%)または「ややそう思う」(36.5%)と回答。さらに「FX取引でどのような場合に損切りをするか、自分で基準を決めているか」の問いに対して、5人に1人が「基準を決めているが、あまり守れていない」(21.2%)と答えています。智さんも同じようなパターンで損失を拡大。気づけば証拠金は底をつき、損失を補填するために安易にカードローンに手を出してしまった……という顛末でした。

 

「しかも、一社だけではありませんでした。A社で限度額まで借りると、次はB社、そしてC社と……雪だるま式に借金が増えていく典型的な多重債務の状態に陥っていたのです。最初の嘘がばれた後も、まだ隠していることがある。その事実に、私は眩暈がしました。」

 

最終的に判明した借金の総額は、カードローンと消費者金融を合わせて約800万円。最初の嘘から発覚するまでの、わずか1年2ヵ月の間に膨れ上がった金額でした。


「もう、目の前が真っ暗になりました。何よりもショックだったのは、借金の額そのものよりも、私がまったく気づかないところで、夫がたった一人で嘘を重ね、私を騙し続けていたという事実です」

 

美沙子さんは、すぐに智さんの両親に連絡。幸いにも、事情を理解した両親が500万円を立て替えてくれました。残りは夫婦で返済計画を立て、毎月決まった額を返していくことになったといいます。


「このままでは破産してしまう……」と心配していましたが、ひとまずは破綻を免れ、返済の道筋が見え、安堵したといいます。しかし、一度壊れてしまった信頼関係を元に戻すのは容易ではありません。


「夫は、『前の結婚のトラウマで、お金のことで縛られるのが怖かった。見栄を張ってしまった』と泣いて謝りました。その気持ちも、少しは理解できます。でも、だからといって、嘘をついていい理由にはなりません」

 

美沙子さんは今、夫に対して一つの条件を出しているという。それは、信用情報機関に夫婦で情報開示請求を行うこと。JICC(株式会社日本信用情報機構)とCIC(株式会社シー・アイ・シー)の2社に照会し、本当に他に隠している借金がないか、自分の目で確かめるまでは、心の底から夫を信じることができない、と。


「『お財布が別』という夫婦の形は、お互いを尊重し、信頼しているからこそ成り立つものだと思っていました。でも、私たちの場合は、それが逆にコミュニケーション不足を生み、問題を見えづらくさせてしまったのかもしれません。お金の話は、時として気まずいものですが、夫婦である以上、避けては通れない大切なことなのだと痛感しています」

[参考資料]
株式会社プラスエイト『結婚後のお金事情に関する調査』
合同会社WOZ『FX取引の損切りに関する調査』