現代の日本を生きる20代・30代は、かつてない経済的課題に直面しています。物価は上がり続け、実質賃金はマイナスが続くのが実情です。これは、給料の額面が増えても、買えるモノの量はむしろ減っていることを意味します。その結果、30代の貯蓄額の中央値は単身世帯で100万円、二人以上世帯でも150万円ほど(金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(令和5年))。多くの若者が、急な出費に耐えうる十分な蓄えを持てていないのが現実です。このような時代に、親世代の常識だった「万が一に備え、貯蓄も兼ねて手厚い保険を」という考え方は、もはや通用しません。そんな若者世代が賢くリスクに備える方法とは?
【警告】当てはまったら要注意…20代・30代が加入すると「将来後悔する保険」 (※写真はイメージです/PIXTA)

保障と貯蓄をわけるべき理由

公的保障で足りない部分を補うには、保障機能に特化した低コストの掛け捨て保険が合理的です。「掛け捨ては損」という考えは、保険料で安心を買うという保険の本質を見誤っています。掛け捨て保険は、保険料が安い分、浮いたお金をより効率的な資産形成に回すことが可能です。

 

掛け捨て保険の具体的な活用法

厚生労働省の「患者調査」によると、平均入院日数は年々短期化しています。そのため、入院日数に応じてもらえる日額タイプ(例:1日1万円)より、入院したら一時金で30万円といったプランが実用的です。

 

なぜ平均入院日数は短期化しているのか?

 

理由は二つあります。一つは、腹腔鏡手術のように身体への負担が少ない医療技術の進歩。もう一つは病院の経営事情です。日本の病院は非営利が原則ですが、限られた人員で健全な運営をするには「病床稼働率(ベッドの回転率)」を上げる必要があります。そのため、患者を長く入院させるケースが減っているのです。

 

働けなくなった場合に備える就業不能保険は、障害年金で不足する生活費(例:月10万〜15万円)を補う形で設定します。どんな保険もそうですが、特にこの就業不能保険は、支払い条件が厳しい商品が多いため、加入前によく理解することが重要です。

 

死亡保険は、ライフステージに合わせてメリハリをつけます。子のいない共働き夫婦の場合、ペアローンを組んでいるケースも多いでしょう。配偶者に万が一のことがあった場合でも、亡くなった直後からすぐに前と同じように働くことができるか、といった視点からも検討するようにしましょう。子育て世帯の場合は、子どもが独立するまでの20年間など、期間を限定した定期保険で大きな保障を確保するのが合理的です。

「貯蓄型保険」が非効率な理由

「保障も貯蓄も」という耳障りのよい響きを持つ貯蓄型保険(終身保険、養老保険、外貨建て保険など)。しかし、これらは若者の資産形成において三重苦を抱えているといえます。

 

支払った保険料から、保険会社の運営費や販売員の高額な手数料が引かれます。一般的な投資信託などでも手数料が引かれますが、同額を運用に回した場合、保険商品のほうが実際に運用に回るお金が少なくなりやすいです。

 

また、現在の保険の予定利率は1%を大きく下回るものがほとんどです。物価が年3%上がる時代に、これではお金の価値は実質的に毎年減っていきます。政府が後押しするNISAやiDeCoのほうが、税制優遇の面でもはるかに効率的です。

 

物価は上がるのに賃金は上がらない時代、将来不安から「貯蓄もできる保険」に手を出すのは、貴重な資産を静かに失う罠にはまるようなものです。真の安心とは、高額な保険商品に頼ることではなく、正しい知識で自らの金融戦略をコントロールすること。「このお金があったら、もっと投資に回せた」と将来後悔しないためには、保障と資産形成を明確に使い分けることで、未来を豊かにする確実な一歩を踏み出せます。