バブル崩壊後の1990年代から2000年代にかけて就職活動を行った氷河期世代。学校を卒業しても就職できず、今なおその影響に苦しんでいる人も多い世代です。その余波は、家族の晴れの日にも及ぶこともあるようです。
情けない…「手取り月19万円」45歳の氷河期世代、10歳年下の弟の結婚式「他の用事と重なって」と苦しい言い訳で欠席する「悲しい現実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「ごめん、行けない」…電話を握りしめ、涙

後日、招待状が届きました。家族はゲストを迎える側だから招待状は不要と言われていますが、昨今の結婚式では家族にも送るケースが多いそう。

 

招待状の返信ハガキを前に、大輔さんの苦悩の日々が始まりました。消費者金融の広告が目に入るたび、「一時的に借りてしまおうか」という考えが頭をよぎります。しかし、ただでさえ厳しい生活に、これ以上の負債を抱える恐怖が彼を押しとどめました。

 

祝福したい気持ちはある

現実問題、お金がない

情けない兄だと思われたくない

 

さまざまな気持ちが交錯。何日も悩み抜いた末、大輔さんは決断をします。

 

「本当に申し訳ないんだけど、どうしても外せない用事と重なってしまって。たぶん、出席できそうにないんだ」

 

弟の結婚式当日、たまたま外せない用事……苦しい言い訳であることは明らかでした。「……そっか。仕事、そんなに大変なのか。残念だけど、仕方ないよな」。明らかに落胆しているのが分かる声でした。そして健太さんはそれ以上、何も追及しませんでした。

 

「情けない……」

 

通話が切れると、その場に崩れ落ちるように床に手を着いた大輔さん。スマートフォンを握りしめたまま、悲痛な声が響きました。

 

[参考資料]
厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)』