将来への不安から新NISAを活用した資産形成に注目が集まる一方、物価高による家計の圧迫は年々深刻さを増しています。総務省の「家計調査報告(2025年平均)」によると、二人以上の世帯のうち勤労者世帯の実収入は名目で前年比増加しているものの、物価変動の影響を除いた実質では前年比0.9%の減少となっており、額面が増えても実際の生活のゆとりは削られているのが現実です。こうした状況下で、家計改善の第一歩として見直しの対象になりやすいのが、日々のカフェ代やペットボトル飲料代といった、無意識に使いがちな少額の支出――いわゆる「ラテマネー」です。今回紹介するのは、都内に住む20代の共働き夫婦の事例です。毎朝のスタバ代を巡って夫婦間で、激しい議論が繰り広げられることになりました――。※事例の人物名はすべて仮名です。
540円のカフェラテを買って毎朝出勤する〈手取り25万円の27歳妻〉…マイ水筒を持参する〈手取り31万円の28歳夫〉から「その分でNISAしよう」と詰められた夜 (※写真はイメージです/PIXTA)

妻のラテマネー…夫が抱いていた「積もり積もる不満」

都内のデザイン事務所で働くマイさん(27歳・手取り月25万円)にとって、毎朝の出勤ルートにあるカフェに立ち寄る時間は、一日のモチベーションを高める大切なルーティンでした。540円のラテをテイクアウトし、オフィスで一口飲んでから仕事に入るのが、彼女にとってのやる気スイッチだったのです。

 

一方、メーカー勤務の夫・リョウさん(28歳・手取り31万円)は真逆のタイプ。毎朝自宅で淹れたお茶やコーヒーをマイ水筒に詰め、水筒の中身が切れたら会社のウォーターサーバーで冷水を補給する節約派です。

 

実はリョウさん、結婚前からマイさんの「ちょっとした出費」がずっと気になっていました。二人で外出するたびに自販機でジュースを買ったり、ちょっとした空き時間ができるとすぐにカフェに入ろうとしたりする姿に、これまでも何度か苦言を呈してきたのです。

 

交際中は「本人の自由だから」と流していましたが、結婚して将来をともにするとなったいまは違います。まだ二人に子どもはいませんが、「これから子どもを作ったり、マイホームを購入したりすることを考えると、妻のこうしたお金の使い方がどうしても心配になる」と、リョウさんは密かに危機感を募らせていました。

「それ、NISAに回せば20年で444万円になるよ?」

ある夜、二人がリビングで毎月の支出を確認していた際、リョウさんはノートパソコンで家計簿アプリを開き、真剣な表情でマイさんに話を始めました。

 

「マイちゃん、毎朝買ってるラテだけどさ。出勤日を月20日とすると、毎月1万800円使ってることになるよね。年間だと約13万円。これ、新NISAで運用に回したらどうなるか計算してみたんだよ」

 

リョウさんが提示したシミュレーション画面には、次のような数字が並んでいました。

 

毎月の積立額:1万800円(毎朝のラテ代と同額)

想定利回り:年利5%(全世界株式や米国株インデックスに投資した場合の平均的想定値)

運用期間:20年間

積立元本:259万2,000円

20年後の運用資産額:約444万円(運用益:約185万円)

 

「この1万800円を毎月NISAのつみたて投資枠に回すだけで、20年後には複利の効果で440万円以上の資産ができるんだよ。日常のちょっとした出費を見直すだけでこれだけの差が出るのに、毎朝540円を使い続けるのってもったいなくない? 水筒にするのはどうかな?」

 

説明を聞いたマイさんが、胸の中にふつふつと込み上げてきたのは納得感ではなく、強い反発心でした。

 

「私だってなにも考えてないわけじゃないよ。NISAだって少しだけど毎月やってるし、2人で決めた貯金だって毎月ちゃんとやってるじゃない!」

 

「いやだから、さらにNISAに回せば将来安心だよねって……」

 

マイさんは我慢できずに思いをぶつけました。

 

「私にとって毎朝のラテは仕事のモチベーションなの。それに、毎朝水筒を洗って飲むものを用意するために早起きするなんてしんどい。朝は少しでも長く寝ていたいの」

 

将来のために家を買ったり子どもの資金を貯めたりする大切さは理解しつつも、自分の限界と日々の楽しみを否定されたことに、マイさんは憤りを隠せませんでした。

 

「リョウくんが水筒を持って節約するのは自由だけど、私の日々の楽しみやモチベーションまで奪って、20年後のためだけにいまを我慢しろってこと? NISAで将来お金が増えたとして、そのために削られたいまの私の毎日はどうなるの?」