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FIRE後に待ち受ける想定外
都内の大手IT企業でシステムエンジニアとして働いていた佐々木翔太さん(38歳・仮名)は、37歳の秋に長年の夢だったFIREを達成しました。
「志望していた企業に入社できましたが、組織で働くことに息苦しさを感じていました。これが40年以上続くと思うと耐えられなくて。早々にFIREを志向するようになりました」
現役時代の最終的な年収は約1,100万円。20代半ばから質素な節約生活を徹底し、給料の半分以上を米国株や世界株のインデックス投資に回してきました。
退職時点での総資産は、株式が1億8,000万円、預貯金が2,000万円の計2億円。長年思い描いてきた「働かなくても生きていける生活」を、ついに手に入れたのです。
「配当金などは年間400万円になる計算でした。年間の生活費は300万円くらい。一人なら十分に生活していける」
ところが、退職して間もなく、思い描いていたFIRE生活には少しずつ亀裂が入り始めます。最初に佐々木さんを襲ったのは、想像以上の孤独と退屈。朝起きても、やるべき仕事はありません。誰かとの約束に遅れないよう急ぐ必要もありません。同世代の友人たちは平日の昼間も働いているため、気軽に会える相手もいません。日中に会話を交わす相手は、コンビニやスーパーのレジ係くらいという日が続きました。
「最初の1〜2週間は楽しかった。でも次第に、会社員時代にあれほど欲しかった自由を持て余すようになったんです」
内閣府『令和7年 人々のつながりに関する基礎調査結果』によると、佐々木さんのような30代で孤独感を「しばしばある・常にある」と感じる人の割合は6.1%と、全体平均(4.5%)を上回っています。さらに、同居人がいない単身男性ではその割合が12.8%に達し、気軽に話せる相手が「いない」と答えた人では25.0%が深刻な孤独を感じています。
また、思わぬところでも「会社員」という肩書きを失った影響を感じることになります。心機一転のために引っ越しを検討し、都内の賃貸マンションの入居審査を申し込んだときのこと。不動産会社から告げられたのは、「定職のない方は原則としてお断りしています」という言葉でした。
「最初の不動産会社では、資産が2億円あることを証明してもダメでした。もちろん、保有資産の証明で審査が通るケースもあるのですが、自分の身分を理由に断られる経験がなかったので……。社会から無視されているような、強い屈屈感を感じました」
この経験は、佐々木さんのFIREに対する考え方を少しずつ変えていきました。
「お金があれば大丈夫だと思っていた。でも、実際には違った。会社員だったときは、株価が下がっても『まあ、そのうち戻るだろう』くらいに考えていました。でも、仕事を辞めた途端、株価の下落が自分の生活に直結するようになったんです」