【第9回】「直美=悪」ではないが…そこにある〈闇〉と、解決のための一歩(全10回)

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聖心美容クリニック
【第9回】「直美=悪」ではないが…そこにある〈闇〉と、解決のための一歩(全10回)
※(画像はイメージです/PIXTA)

専門研修プログラムを受けず、直接美容医療に従事することを「直美(ちょくび)」といいます。6年間の外科経験を経て美容医療業界へ転身した著者は、美容医療を志す若いドクターたちに「直美」の闇を訴えます。本稿では、聖心美容クリニック統括院長の鎌倉達郎氏の著書『信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと』(幻冬舎メディアコンサルティング)より、著者が懸念する「直美」の問題点と、日本の美容医療カリキュラムの課題について解説します。

悪いのは「直美」か、経営者か。一部の暴走が業界全体を汚していく

直近で起きている典型的なトラブルが、強引なアップセルの問題です。通常料金よりはるかに安い施術料を広告に載せて患者様を集客したクリニックがあります。患者様は低料金で施術を受けられるものと期待していたのですが、担当したドクターが「あなたの場合はこの手術では無理」等々、何かと理由をつけて何十倍もの施術を提案したとのことです。患者様はそんな高額な費用を払えないとお断りされたのですが、クリニック側が帰してくれず、1時間も2時間も説得されて泣く泣く契約したというトラブルです。

 

また、自由診療なので保険証は不要なのですが、受付で保険証を預かると言われ、患者様は何の疑問も抱かずに保険証を預けました。すると、同じように高額な治療を提案され、今度は保険証をなかなか返してくれず、2時間近く経ったあと、しぶしぶ返してもらったというトラブルです。

 

ここまでくるとほとんど犯罪といっていいくらいなのですが、問題はその後で、こういう強引なビジネスをやるようなクリニックの手術のスキルが高いわけがありません。手術の結果も良くなく、するとまた違う手術を提案して契約を結び、そのリカバリーもうまくいかず、患者様は別のクリニックを頼らざるを得なくなるというケースもありました。

 

このような行為をしている医師がすべて直美ではありません。ベテランの医師が手を染めているケースもありますが、まだ経験が少なく反論できない直美医師がクリニック運営側から言い含められ加担させられているということを複数の情報源から確認しています。

 

昨年、医療関係者の集まりで強引なアップセルの話をしたところ、会合に出席されていた大学教授やクリニックの院長もご存じで、すでに多くの方々の耳に入るようなトラブルだったことが分かりました。一部のクリニックが起こしたトラブルのせいで、またその中に比較的、直美の先生が多いことで「やはり直美はモラル意識が低い」という目で見られてしまいます。

 

大事なことなので繰り返しますが、思わず眉をひそめてしまうようなトラブルを起こす大半はこれらを先導する一部の経営者や管理者側が問題です。そこに流されてしまう直美を含むドクターも問題ですが、それらはあくまで一部であって、多くの経営者やドクターは真っ当な医療提供をしていることをご理解いただきたいと思います。

 

とはいえ、美容医療業界の健全化を阻みかねない悪質なクリニックを看過することはできません。厚生労働省は美容医療業界のさらなる健全化を目標に、患者様の安全性の確保と美容医療従事者の違法行為の排除、技術とモラルの向上等を盛り込んだガイドラインの作成に着手しました。

 

私も作成メンバーに選ばれたので微力ながら尽力させていただいていますが、先ほどの強引なアップセルの問題について意見交換したところ、参加者の全員が「これはアウトだろう」と言われました。私も、あのような悪質な手口を許容してはならないと思っています。

 

ガイドラインには法的拘束力がないので、実施されたときにどのくらい遵守されるかはまだ分かりませんが、これも大きな前進だと思い、美容業界全体がさらに良くなることを願うばかりです。

 

 

鎌倉 達郎
聖心美容クリニック
統括院長

 

 

※本連載は、鎌倉達郎氏の著書『信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと

信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと

鎌倉 達郎

幻冬舎メディアコンサルティング

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