【第9回】「直美=悪」ではないが…そこにある〈闇〉と、解決のための一歩(全10回)

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聖心美容クリニック
【第9回】「直美=悪」ではないが…そこにある〈闇〉と、解決のための一歩(全10回)
※(画像はイメージです/PIXTA)

専門研修プログラムを受けず、直接美容医療に従事することを「直美(ちょくび)」といいます。6年間の外科経験を経て美容医療業界へ転身した著者は、美容医療を志す若いドクターたちに「直美」の闇を訴えます。本稿では、聖心美容クリニック統括院長の鎌倉達郎氏の著書『信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと』(幻冬舎メディアコンサルティング)より、著者が懸念する「直美」の問題点と、日本の美容医療カリキュラムの課題について解説します。

技術が高いのに、大学に専門カリキュラムがない日本の美容医療

先日開かれた日本形成外科学会でも世界の教育システムが討論されたのですが、非常に興味深かったのが、アメリカや韓国の総合病院、大学病院では、形成外科の一部として美容外科が当たり前のように行われていることでした。さらに、海外の形成外科の専門医の試験では美容外科に関する設問が3割程度の割合で出題されるとのことでした。

 

このように、海外には美容医療が医療の一分野として認められている国もあります。残念ながら日本の美容医療はまだそこまで認められていません。美容医療に対する医療機関は政府の考え方が変わらない限り、日本の教育機関である大学が美容医療を教育し、診療を行うのは難しいのだろうと思います。

 

日本の美容医療の技術の高さは諸外国からも注目され、一目置かれています。来日して日本の治療技術を学ぶ海外のドクターもおられます。にもかかわらず、日本の教育機関には美容医療のカリキュラムがないと知ったら、諸外国のドクターたちは「こんなにレベルが高いのにカリキュラムがないなんて、日本は不思議な国だ」と思われるかもしれません。

 

初期研修を経て専門研修プログラムに進めば、専門医のカリキュラムを学ぶことができます。しかし、直美のコースを選べば、すぐに実践には移れるものの、カリキュラムを学ぶ機会がありません。

 

専門医の資格を取ってから美容医療に転科するドクターも多いのですが、専門研修プログラムを学んだかどうかの違いは大きく、経験の浅さと基礎的な知見の観点から見ても、直美のドクターには判断力に深みがないケースが見受けられます。直美を否定はしませんが、経験不足を補う意味でも専門研修プログラムを学んだほうがいいと私は思っています。

 

直美はイコール悪ではないものの、技術の未熟さのほかにも、経験の少なさゆえの純粋さで、悪徳クリニックの方針に染まりやすい、という傾向があります。悪徳クリニックの中には、専門医として自分の診療方針を確立したドクターよりも、経験が少なく反論もできない若い直美ドクターを積極的に採用し囲い込み、ある意味洗脳のように誤った価値観を刷り込んでしまうと聞きます。

 

もちろん、直美を選んだドクターの中にはその後も着実に経験を積まれ、健全なクリニック経営をしておられる方もおられます。むしろそういったドクターのほうが多いのですが、ほんの一部のドクターが起こすトラブルのせいで、直美はモラルが低いという目で見られてしまうのです。

 

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※本連載は、鎌倉達郎氏の著書『信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと

信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと

鎌倉 達郎

幻冬舎メディアコンサルティング

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