(※写真はイメージです/PIXTA)
こんなはずでは…「収入減」と「想定以上の支出」に仰天
定年と同時にローン完済。一方で給与は大幅減となった健一さん。ただ月収減に近いローン返済があったことを考えると、特段、不安に思うことはないように思えました。しかし、購入から30年が経過したマイホームは、あちらこちらにガタがきていました。
ある日、雨漏りをしているのを発見し、詳しく点検してもらったら、さまざまな不具合がでるわでるわ――まずは屋根や外壁の劣化。これが雨漏りの原因でした。さらに基礎をみてみると、ひび割れに腐食。給排水管や電気配線の老朽化で漏水や漏電の心配も。キッチン、浴室、トイレといった水回りも劣化が激しく、床下には一面カビが……もちろん、最低限のメンテナンスをして住み続けることもできますが、「都度対応したほうが、最終的に高くつきますよ」とアドバイスを受けました。
「この先、住み続けることを考えると、バリアフリー住宅の大幅リフォーム、または建て替えを検討してみてはどうでしょうか」
ローンを払い終えたばかりなのに……何とも不穏な響きです。試しに見積りをお願いすると、全面リフォームで1,000万円、建て替えとなると最低限1,500万円。「なんと、こんなにかかるのか!」と、見積りをもらったとき、思わず声が出てしまいました。
老後を見据えて準備してきた貯蓄は1,500万円ほど。そこに定年退職金が1,000万円ほどプラスされました。築30年のマイホーム問題。貯蓄2,500万円からドンと払ってしまうか、老後費用が大きく減ってしまうことを避けローンを活用するか……いずれにせよ、お金をかけないといけないことはわかっていますが、究極の二択、答えを出すのはなかなか難しそうです。
金融広報中央委員会『令和5年 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』によると、世帯主60代世帯において「借入金あり」は14.1%。その平均値は1,099万円で、中央値は300万円です。定年を迎えてから負債を抱えている人は7人に1人。このなかには、リフォーム・建て替えで新たに負債を抱える人もいるでしょう。
良子さんは、半年前の家計簿を開きました。そこには夫の給料として「45万円」という、今となっては眩しすぎる数字が書き込まれています。あのころはローンの支払いに追われながらも、収入がある分、まだ心に余裕がありました。
「……涙が出そうです」
思わず、心の声が漏れました。果たして、田中夫婦の選択は?
「老後資金が大きく減ってしまうのは怖かった。利子がかかるのは少々痛いですが、日々の安心のために、ローンを活用することにしました」
[参考資料]
金融広報中央委員会『令和5年 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』