
最低限の生活もムリ…生活保護の実態
「腹が減っても、ひたすら我慢するだけ。惨めですよ」
そう力なくつぶやくのは、都内で暮らす鈴木一郎さん(72歳・仮名)です。かつては数名の従業員を抱える会社の社長として、忙しい日々を送っていました。しかし、事業の失敗と自身の病気が重なり、数年前から生活保護を受給しています。
現在の鈴木さんの1日の食事は、夕方の1食のみ。近所のパン屋で分けてもらうパンの耳をかじるだけというときも。年金月7万円と、月6万円弱の生活保護費から、アパートの家賃と水道光熱費を払い、残りで医療費や日用品などを捻出。食費に充てられる金額は、ごくわずかです。昨今の物価高で、さらに生活費は厳しくなっています。
「1日3食なんて、とんでもない。夢のまた夢ですよ」
栄養のある食事を摂れない日々が続き、持病の悪化にもつながっているといいます。医師からは栄養指導を受けていますが、それを実践する経済的な余裕はありません。「このままではいけない」と頭では分かっていても、どうすることもできない現実に、鈴木さんは唇を噛むだけ。
実は、鈴木さんのように「十分な食事」を諦めている生活保護受給者は、決して少なくありません。株式会社アーラリンクが生活保護受給者を対象に行った『生活保護に関する意識・実態調査』によると、「経済的なことが理由で諦めた経験」として、「十分な食事をとることを諦めた」が67.2%と3人に2人が日々の食事に事欠いているという衝撃的な実態が明らかになりました。また「携帯電話やスマホの契約・維持を諦めた」が46.9%。今や生きていくための重要インフラとなっている携帯電話・スマホを、2人に1人が解約。さらに「誰かに相談することを諦めた」が38.9%、「光熱費(電気・ガス・水道)を節約しすぎて健康に影響が出た」が36.8%、「病院に行くことを諦めた」34.8%と、3人に1人が生活に困っている状況や孤立状態にあることがわかりました。
生活保護は、憲法25条で保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するものですが、それさえも脅かされている現実が浮き彫りになっています。