(※写真はイメージです/PIXTA)
孤独に陥りやすい高齢男性
現役時代、多くの人と関わってきましたが、あくまでも仕事上での付き合い。プライベートでの繋がりはなく、完全リタイアしたなかでは、日常的にコミュニケーションを取る人は家族以外いませんでした。そんな家族も今は離散。「気が付くと、丸一日、言葉を発しないときもありました」と岡田さんはいいます。
強い孤独感に押しつぶされそうになったとき、食事をとるために通っていたこの居酒屋で、「バイト募集」の貼り紙を見つけた岡田さん。どこか藁にも縋る気持ちで働き始めたといいます。
「寂しさを紛らすために居酒屋で働いているなんて、恥ずかしい……こんな情けない姿、見られたくなかった」と恥ずかしそうに話す岡田さん。ちなみに偶然の再会となった元部下の斉藤さんは、最近、このあたりに家を買い、引っ越してきたのだとか。
厚生労働省によると、2023年、離婚総数に占める熟年離婚(婚姻期間20年以上の離婚)は23.5%と過去最高を更新。離婚件数は減少傾向にあるものの、熟年離婚は高止まりしています。定年後、「長年連れ添った夫婦の第二の人生」は、もはや当たり前とはいえないのかもしれません。
また内閣府が行った『孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和3年実施)』によると、孤独感は男女で差が見られ、男性のほうが孤独感を覚えやすいといいます。現役時代に仕事を中心とした生活を送ってきたため、定年退職後に地域との交流が減り、孤立しやすい傾向にあるためです。孤独リスクも男性のほうが高いと指摘されています。
東京都監察医務院によると、2023年自宅で孤独死した8,691人のうち、単身世帯男性が4,130人、単身女性が1,721人。さらに60代以上に限ると、単身男性が3,077人、単身女性が1,418人。圧倒的に男性のほうがひとりで最期を迎えていることがわかります。
誰にでも訪れる「定年後」という時間。 現役時代の肩書や年収は、人生の終盤戦において何の保障にもなりません。仕事に追われて見過ごしてきたものと、どう向き合うのか。老後の生活設計において必要な視点なのかもしれません。
[参考資料]
厚生労働省『人口動態』
東京都監察医務院『東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計(令和3年)』