持ち家意識の高い日本。全年代平均で持ち家率は6割、高齢者になると8割を超えます。逆の見方をすると、2割弱の高齢者は賃貸暮らしだということ。しかしそこには「年齢」という高すぎる壁が存在します。
何かの間違いでは…年金月20万円・エリート意識の強い75歳のおひとり様男性、「金ならあるぞ」と騒いでも「家賃10万円・賃貸マンション」5回連続審査落ちの現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者でも「お金がある」だけでは賃貸住宅に住めない

「お金は将来の心配をする必要がないほどある」

 

そう豪語するのは、森田哲也さん(仮名・75歳)です。元大手企業で働いていたといい、年金は月額20万円。これといった借金もなく、退職金2,500万円は今なお手付かずで残っているといいます。30代のときに借りたマンションに、「立地が便利だから」という理由で住み続けて、40年。ついに出ていくときが訪れました。建て替えが決まったのです。

 

管理会社を通じて建て替えを知ったのは1年ほど前のこと。だから次の更新はなし。話が出たときにすぐに新居探しを始めたらよかったのですが、森田さんは元来、「夏休みの宿題は直前にならないとやらないタイプ」。新居探しを始めたのは、退去期限が迫るなかでした。

 

新しい新居の条件は、現在住んでいるマンションと同じ駅を利用できること、家賃は月10万円程度、できれば築浅であること。

 

これらの条件をもとに街の不動産会社を訪ねたところ、少し面倒くさそうな顔をされたといいます。「客相手に、その態度はなんだ」と、少々イラっとしたという森田さん。ただ気のせいかもしれないので、いったん冷静を装います。しかし、さらに話を進めていくと、担当者は「ちょっと厳しいかなぁ」とポツリとひと言。その態度がまた人を小馬鹿にしているように映り、プチン。「なんだ、その失礼な態度は!」と声を荒げ、不動産会社を後にしてしまったといいます。

 

「やってしまった――」と思いつつ、気を取り直して別の不動産会社を訪ねます。そしてなぜ先ほどの不動産会社が面倒くさい顔をしたのか、わかったといいます。「気になった物件について問い合わせをしてくれるのですが、年齢を伝えると『そんな年齢に人に貸せない』とでもいわれるんでしょう。電話を切ったあとに『すみません、先約があったみたいです』と言い訳が続きました」。さらに入居審査となった物件でもNGが続き、その数、なんと5回にもなったといいます。

 

「家賃を払うだけのお金はある。それなのに部屋を借りられないなんて……何かの間違いでは?」

 

何とも理不尽なことが続くなか、退去期限が迫ります。「もっと早く動いていれば」と思っても後の祭りです。