子供を作らず、さまざまな理由から2人きりの生活を選んだ夫婦がいます。身体的・経済的な状況、年齢とキャリア。幾重にも重なる要因が、夫婦の決断を左右するでしょう。しかし、時が経ち状況が変化したとき、一度は下したはずの結論が再び揺らぐことも……。本記事ではAさんの事例とともに、現代社会の夫婦の実情を社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が深掘りします。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。
子のいない夫婦を望んだはずが…年収600万円の妻・39歳で「やっぱり子供が欲しい」といいだす年収1,000万円の40歳夫、その後に待ち受ける悲劇【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

妊活を諦めて2人の生活を選んだ夫婦

Aさん夫婦は、共働きです。26歳で結婚。当初は「2人とも子供が好きだし、家族が増えると楽しいよね」と話をしていました。妻は30歳までに子供を産んで、仕事に復帰したいと考えていました。

 

しかしながら、妊活を行うもなかなか授かることができず、同僚や友人に妊活していると笑いながら話していた妻は、しだいに笑顔が消えていきます。「夫婦どちらかに問題があるのでは? 一度病院で検査してもらおう」といいました。Aさんが「検査や不妊治療はしたくない。子供がいなくてもいいじゃないか」と答えると、妻は「もうすぐ私は35歳。高齢出産になると、身体的負担が心配なため、今年が最後のチャンスかもしれない」といって引き下がりません。

 

Aさんは、不妊治療に対する経済的負担や治療に対する偏見もあり、子供ができなくても2人でいつまでも恋人同士のように過ごすのも悪くないだろうと妻に諭します。

 

「そこまで夫がいうなら……。子のいない夫婦で2人の生活を楽しむことにしよう」妻も自分をなんとか納得させました。

39歳、いまさら夫の考えが変わった理由

2021年国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」では、予定する子供数が1人の割合は15.0%、「子供は持たない」を含めた予定子供数が1人以下の夫婦が全体の2割を超えています。いまを充実させ楽しく過ごすことを考えようと、平日は仕事に没頭し、休みの日は趣味のゴルフをしたり、温泉に行ったりと夫婦2人の時間を楽しむことにしました。

 

Aさんは営業職で大きな商談が複数件決まり、40歳のころには年収1,000万円を超えました。妻の収入と合わせると世帯年収は1,600万円となり、俗にいうパワーカップルです。

 

ある日、温泉旅行を楽しんでいたところ、夫から提案がありました。「以前は収入が少なく経済的に苦労するだろうと、子供がいない生活を選んだが、ここまで出世できるとは思わなかった。いまからでも遅くないと思う。やっぱり子供が欲しい」というのです。このとき妻は39歳、初産が40歳以上は高齢出産の中でも、母体と胎児の両方にリスクが伴う可能性があるといわれています。20代のときの妊活も上手くいかなかったことを考えるといまさら、子供が欲しいといいだす夫に妻は驚きを隠せません。

 

「子供を持たない夫婦でいようと、諦め前向きに考えたのはなんだったのか……」妻はやりきれない思いを感じました。