住宅購入価格の高騰を背景に、ペアローンを検討する人が増えています。ペアローンにより、借入可能額が増えることで、より高額な物件や立地のよい物件など、選択肢が広がることが検討する理由のようです。また、住宅ローン控除の二重適用という税制上のメリットも。一方で、リスクも無視できません。39歳の田中夫婦(仮名)の事例をもとに、FP Office株式会社の茂野博起FPが解説します。
惨めだな…世帯年収1,100万円・39歳夫婦が6,500万円のマイホームを購入→“理想の家族”と周囲から羨望のまなざしも、11年後「誰も予想していなかった未来」に悔し涙のワケ【FPが警告】 (※写真はイメージです/PIXTA)

マイホーム購入“前”に押さえておきたいこれだけのポイント

夫婦の年齢が上がるにつれて、目の前の介護費用だけでなく、子どもたちの教育費といった負担も見込まれます。さらには「老後2,000万円問題」に代表される、自分たちの長い老後生活に向けた対応も考えなくてはいけません。

 

社会保障制度を積極的に活用

そこでまずは、社会保障制度を積極的に活用しましょう。たとえば「介護休業給付金」であれば、休業開始時賃金の67%となるものの、最大93日間、有償で介護休暇を取得することができます。こうした制度を使うことで、介護離職を極力避けることが可能です。

 

マイホーム購入“前”に、あらゆる「リスクヘッジ」を行う

本来、老後破綻を回避するための準備は、マイホーム購入“前”にやってこそ効果を発揮します。購入時の住宅ローン返済負担率が20〜25%以内に収まっていたとしても、そこで安心してはいけません。

 

念には念を入れ、住宅購入後に待ち受けるライフイベントの整理や社会環境の変化を、住宅購入前に想定しておくことが重要です。

 

たとえば下記のような予測可能なリスクについては、事前に対処法を検討しておくことが理想といえます。

 

・金利上昇リスク(「変動金利型」の住宅ローンを組む場合)

・物価上昇による支出の増加

・少子高齢化による税・社会保険料の増加

・子どもの教育費

・親の介護費用

・自身の病気やケガの可能性

・キャリアチェンジによる減収

・退職金制度の改正や廃止の場合の代替案

・住宅ローン控除期間終了による節税効果の終了

など

 

これらのリスクに対しそれぞれ解決策を持っておくことで、万が一の事態にも慌てずに対応できるでしょう。

 

教育や介護といった今後起こりうるライフイベントと、こうしたリスクへの備えを可視化するためには「ライフプランシミュレーション」の策定が有効です。自分たちだけでは難しいという場合には、必要に応じてFPなどの専門家に相談することをおすすめします。

 

ライフプランシミュレーションは、住宅ローンを安心して完済できる可能性を高めるほか、老後破綻を防ぐ「羅針盤」となるはずです。

 

 

茂野 博起

FP Office株式会社

1級ファイナンシャル・プランニング技能士

CFP®(日本FP協会認定)