住宅購入価格の高騰を背景に、ペアローンを検討する人が増えています。ペアローンにより、借入可能額が増えることで、より高額な物件や立地のよい物件など、選択肢が広がることが検討する理由のようです。また、住宅ローン控除の二重適用という税制上のメリットも。一方で、リスクも無視できません。39歳の田中夫婦(仮名)の事例をもとに、FP Office株式会社の茂野博起FPが解説します。
惨めだな…世帯年収1,100万円・39歳夫婦が6,500万円のマイホームを購入→“理想の家族”と周囲から羨望のまなざしも、11年後「誰も予想していなかった未来」に悔し涙のワケ【FPが警告】 (※写真はイメージです/PIXTA)

持ち家=失敗では決してない。しかし…

――持ち家と賃貸どちらが得か。

 

そんな論争を一度は見聞きしたことがあることでしょう。長年続くこの論争には、明確な答えがあるわけではありません。各世帯それぞれおかれた状況が異なるため、最適解をなかなか導き出せないのが問題なのです。

 

そのため、今回紹介した田中夫妻について「持ち家が失敗だったか」といわれると、決してそうではありません。ただ、田中夫妻には大切な視点が欠けていたことも事実です。

 

住宅ローン金利は上昇傾向

ところで、物価上昇などさまざまな要因によって、住宅ローン金利は上昇傾向にあります。夫婦が住宅を購入した2014年頃、金利はいまよりも低く、これが多くの人にとって購入を後押しする要因の1つになっていました。

 

また、住宅ローン申込み申請の際、金融機関は住宅ローンの「返済比率」をベースに審査を行います。返済比率とは、年収に占める「年間返済額の割合」を指します。この数値の目安について、金融機関では「手取り収入の30〜35%以内」といわれることが多いです。しかし、ライフステージの変化やそれに伴うリスクを考慮すると、実際には「20〜25%以内」が適切であると考えます。

 

そのようななか、田中夫妻は「2人目の出産」「親の介護」という大きなライフイベントを想定しておらず、両者とも順調に給与が上昇する前提の返済計画を立てていました。

 

50歳時点の田中夫妻は夫の年収が700万円、妻が550万円でした。ここで仮に妻が介護離職して世帯年収が700万円となる場合、返済負担率は約31.4%となります。

 

田中さんは、「夫婦共働き」かつ「両者とも収入が増えていく」という前提でローンを組みましたが、これが「ペアローン」の危険なポイントです。今回のように、妊娠や介護などでパートナーが働けなくなった場合、途端にローン返済が厳しくなるリスクがあります。

 

今回のケースは決して他人事ではありません。こうしたデータは、世帯収入の減少や金利の上昇などによって、多くの人にとって思わぬ家計破綻や老後破綻の危険性があることを示しています。