年金受給を目前に控え、「ねんきん定期便」に書かれた金額を根拠に老後の生活設計を立てている人は少なくありません。しかし、そこには思いもしない落とし穴が。老後の生活設計を見直す必要に迫られるケースも珍しくありません。
話が違うぞ!65歳元公務員「年金月20万円」もらえるはずが、想定外の年金振込額に唖然「何かの間違いでは?」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「ねんきん定期便」は正確だが、すべては書かれていない

実は、ねんきん定期便の内容は、年齢によって変わります。知らずに見ていると、誤解を招きやすい構成になっているのです。

 

■50歳未満

これまでの納付実績に基づく年金額。納付記録は直近13ヵ月分が記されているが、35歳と45歳には封書で届き、これまでの全記録が記されている

■50歳以上

今後60歳まで同条件で納付を続けた場合の見込額。納付記録は直近13ヵ月分が記されているが、59歳には封書で届き、これまでの全記録が記されている

※60歳以降も厚生年金に加入している場合は、60歳以降もねんきん定期便が届き、見込額には60歳以降に払った保険料の分も反映される

 

このように、ねんきん定期便の内容自体は正確ですが、「控除後の手取り金額」までは表示されません。あくまで額面の予定額である点に注意が必要です。

 

また正確といったものの、人がやることですから100%とはいえません。実際に年金加入記録に「もれ」や「誤り」があるケースが少なからずあります。日本年金機構では、もし間違いがあった場合には、「年金加入記録回答票」に必要事項を記入し、同封の返信用封筒にて返送、または近くの年金事務所に提出するよう呼び掛けています。

 

「私も一応、金額は毎年確認していたんです。でも、税金や保険料まで考えて見ていませんでした。そこまで詳しいことは誰も教えてくれませんでしたから」と佐藤さんは語ります。特に公務員の場合、2015年に共済年金が厚生年金と統合され、「職域加算」が廃止された影響も受けています。昭和30年代生まれの世代では、年金額が想像以上に抑えられている例も珍しくないといいます。

 

現在、佐藤さんは支出の見直しをしつつ、シニア層にも広がりつつあるスキマバイトをスタート。月に数万円の収入を得て、 年金受取額の想定と実際の差異を埋めようとしています。

 

年金制度は複雑ですが、「制度を知らなかったこと」で損をしてしまうリスクもあります。 特に受給直前の60歳以降は、「ねんきんネット」などで詳細な試算も確認できるため、制度の仕組みを理解したうえで将来設計を立てることが重要です。

 

[参考資料]

日本年金機構『大切なお知らせ、「ねんきん定期便」をお届けしています』

日本年金機構『年金加入記録に「もれ」や「誤り」があった場合』