退職金も年金も十分。これで老後は安心……と思っていた矢先に、予想外の支出に直面するシニア世代は少なくありません。長年の仕事を終え、「これからは穏やかな生活を」と考えていても、定年後には思わぬ落とし穴が潜んでいることがあるのです。
「年金月32万円」「退職金4,000万円」静かな老後を送るはずの66歳・公務員夫婦の大惨事…「想定外の出費」に唖然、原因は夫のハマりすぎた趣味 (※写真はイメージです/PIXTA)

家がカビだらけ!原因は夫の行き過ぎたDIY

昨今、趣味としてDIYを始める人は少なくありません。株式会社インテージが2024年に実施した『DIY・ハンドメイドに関する調査』によると、DIY・ハンドメイドが好きな人は、「好き」「やや好き」を合わせて30.6%。また直近1年間にDIY・ハンドメイドをした人に、手作りをする理由・きっかけを聞いたところ、「手作りをするのが好き、趣味」が最多で43.0%。「安く済ませたい」「必要に迫られて」が各30%台で続きます。

 

退職後の生活で、時間がある・お金は節約したいというニーズが重なるなか、DIYは定年後の魅力的な趣味に映るのかもしれません。

 

ただし、見よう見まねの作業にはリスクもあります。とくに防水や電気系統など、専門的な知識や資格が必要な分野では、失敗が思わぬ損害に発展するケースもあるのです。

 

DIY生活が始まって2年目の春、事件は起こりました。雨の多い季節を迎えたころ、信一さんが施工した外壁の防水コーキングが不十分だったため、壁内に水が侵入。断熱材や下地が腐食し、室内にもカビと湿気が広がっていたのです。

 

さらに、電気まわりの照明器具の取り替え工事も自己流で行っていたことが判明。ブレーカーの不具合が発覚し、業者が緊急対応に入ることになりました。修繕のため、専門業者に依頼した見積額は……なんと380万円。しかも火災保険会社からは、「施工不備による過失」であることを理由に、補償の対象外と判断されてしまいました。

 

信一さんは、「まさかこんなことになるなんて」と肩を落としましたが、ときすでに遅し。想定外の支出として約400万円が失われたことで、夫婦喧嘩が勃発。一時、夫婦仲は最悪だったといいます。

 

今回、400万円程度の出費で済んだものの、動画を真似た不十分なDIYにより、シロアリ侵入を許すような隙間施工により、「土台や柱の交換+防蟻処理」で500万円程度がかかったり、DIYでの構造体いじりが原因の傾きや基礎破損により、最悪、建て替えが必要になったりしたケースも。

 

DIYがきっかけで思わぬ高額出費に見舞われた吉岡さん夫婦のケースは、決して特別なものではありません。老後の生活には、「まさかの出費」が潜んでいることがあります。

 

たとえば、住宅設備の老朽化による修繕費やリフォーム代、親の介護にかかる費用、思いがけない医療費、自家用車の故障・買い替え、相続に関するトラブル処理や税金、そして近年では災害による家屋の損傷なども挙げられます。

 

老後資金が潤沢にあると思っていても、こうした想定外の支出が重なれば、家計に大きな影響を与えかねません。だからこそ、退職後の生活では「生活費以外の突発的な支出にも備える」という意識が欠かせないのです。

 

[参考資料]

株式会社インテージ『DIY・ハンドメイドに関する調査』