備蓄米を放出したにもかかわらず、コメ価格は13週連続で値上がり。その先にあったのは、年金だけではどうにもならない、困窮を極める年金生活者の生活でした。
これが老後の現実か…〈年金月12万円〉75歳のおひとり様男性、「米が高くて買えねぇよ」と悲鳴、1日1食で我慢の日々 (※写真はイメージです/PIXTA)

年金だけでは生活が成り立たない…困窮を極める高齢者たち

「自分の老後は自分で何とかする」

 

佐藤さんは、そう思って生きてきたといいます。若いころは中小企業で営業職として働き、65歳まで現役を続けましたが、退職金はゼロ。預貯金は500万円ほどありましたが、老後の生活のなかで減る一方です。親戚とは疎遠で、「生活が苦しい」と相談できる相手もおらず、ただ耐える日々が続いています。

 

「これが老後の現実だよ。こんなひもじい思いをするなんてな」

 

さらに生活に困窮したら、最終的には生活保護という制度があります。厚生労働省によると、2025年1月、生活保護を受ける人は200万4559人。そのうち65歳以上の高齢者は90万1659人で、ひとり暮らしの高齢者は83万9565人です。65歳以上の独居高齢者は約3600万人といわれているので、ひとり暮らしの高齢者の50人に1人以上が生活保護を受けている計算になります。

 

ただ佐藤さんのように、生活保護を受けるほどではないものの、年金だけでは生活が成り立たない高齢者も少なくありません。そんな人たちにとっては、生活の質を大きく左右するちょっとした工夫や情報が命綱となります。

 

たとえば、住まいについてはUR賃貸住宅や自治体の高齢者向け住宅など、比較的安価な物件を検討することができます。また、地域包括支援センターを通じて、買い物支援や配食サービスの情報を得ることも可能です。医療費は、高額療養費制度や各自治体が独自に行っている医療費助成制度を活用することで、一定の軽減が見込めます。さらに、介護保険サービスを早めに申請しておけば、将来的な在宅介護の費用を抑えることにもつながります。

 

ひとり暮らしの高齢者にとっては、体調不良や突発的な出費がそのまま生活の崩壊につながることも少なくありません。そうならないために、計画的な生活設計とともに、地域のつながりを保つことが重要です。警察庁によると、2024年1〜3月にひとり暮らしの自宅で亡くなった65歳以上の高齢者は約1.7万人。単純計算で、年に6.8万人の高齢者が独居状態で亡くなっています。そのなかには「貧困→社会からの孤立」というパターンで孤独死を遂げているケースが多いといわれています。

 

老後に向けて、「こんなことになるとは」と後悔しないためには、お金の準備だけではないと心得ておきたいものです。

 

[参考資料]

総務省『小売物価統計調査(動向編)』

厚生労働省『被保護者調査(令和7年1月分概数)』

警察庁『令和6年上半期(1~6月分)(暫定値)における死体取扱状況(警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者)について』