高齢化が進む日本社会において、親の介護は多くの家族が直面する課題です。特に、高齢の親との同居は、家族構成や生活スタイルに大きな変化をもたらすため、慎重な検討が求められます。住環境の変化は、高齢者の心身に予期せぬ影響を与える可能性があり、介護の負担増加や経済的な問題を引き起こすことも少なくありません。実情をみていきます。
悔やんでいます…世帯年収1,900万円の30代パワーカップル、ボサボサ頭の75歳母と同居を開始も、二世帯住宅・真夜中に勃発した「大修羅場」

マイホームは二世帯住宅に

同じころ、正美さんと夫の孝さんは「子どもたちも小学生になったし、賃貸暮らしから家を購入しよう」とマイホームについて話し合っていました。さまざまな物件を探しているうちに、ふと正美さんの頭に妙案がよぎります。「実家の母を東京に呼び寄せて、一緒に暮らせばいいのでは?」夫にこの提案をもちかけると、快く受け入れてくれました。母と暮らすのであれば、最低でも4LDKの間取りが必要。物件は戸建てに絞ることにしました。

 

次の日、正美さんは母に電話して、東京で一緒に暮らさないか、と切り出してみました。すると母はとても驚き、「いまの家を離れたくないし、都会になんて住めないわ」と断ろうとします。しかし、正美さんはあきらめず、孫と住めること、雪かきも必要ないこと、遠くの病院に通う必要もなくなること、車にもう乗らなくていいことなど、東京に住む利点を根気よく説明しました。少し時間が欲しい、といった母でしたが、1週間後に「あなたたちがいいのなら、一緒に住みたい」と返事をくれました。

 

予算がかさみ、東京郊外に建築

母の了承が得られた正美さんと孝さんは、さっそく土地探しとハウスメーカー探しに取り掛かりました。母のためのキッチンとトイレ、居室を備えた家を各メーカーに設計してもらったところ、やはりそのぶん建物が大きくなり、広い土地も必要なことがわかりました。土地費用がかさんだため、資金計画は9,600万円となりました。自己資金の2,000万円を引いて、住宅ローンの借入額は7,600万円、毎月の返済額は19万9,000円です。いまの住まいである築20年のマンションの家賃が22万円のため、月々の支払いはむしろ安くなります。

 

とはいえ、これまで正美さんも孝さんも職場までドアトゥドアで20分もかからずに通えていましたが、それぞれ電車で40分+徒歩20分と、通勤時間が大幅に伸びてしまいます。しかし、それを承知のうえで計画を進めていくことに決めました。

 

問題は実家の処分です。買い手がつくか不安でしたが、そう時間はかからずに地元の不動産業者から申し出がありました。300坪ある敷地に建売住宅を5棟に分譲して販売するらしく、自宅の解体費用は業者が負担、とのこと。850万円という値がつき、検討の末、その業者と売買契約を交わしました。850万円は母の老後資金の大きな足しになります。