マイホームは二世帯住宅に
同じころ、正美さんと夫の孝さんは「子どもたちも小学生になったし、賃貸暮らしから家を購入しよう」とマイホームについて話し合っていました。さまざまな物件を探しているうちに、ふと正美さんの頭に妙案がよぎります。「実家の母を東京に呼び寄せて、一緒に暮らせばいいのでは?」夫にこの提案をもちかけると、快く受け入れてくれました。母と暮らすのであれば、最低でも4LDKの間取りが必要。物件は戸建てに絞ることにしました。
次の日、正美さんは母に電話して、東京で一緒に暮らさないか、と切り出してみました。すると母はとても驚き、「いまの家を離れたくないし、都会になんて住めないわ」と断ろうとします。しかし、正美さんはあきらめず、孫と住めること、雪かきも必要ないこと、遠くの病院に通う必要もなくなること、車にもう乗らなくていいことなど、東京に住む利点を根気よく説明しました。少し時間が欲しい、といった母でしたが、1週間後に「あなたたちがいいのなら、一緒に住みたい」と返事をくれました。
予算がかさみ、東京郊外に建築
母の了承が得られた正美さんと孝さんは、さっそく土地探しとハウスメーカー探しに取り掛かりました。母のためのキッチンとトイレ、居室を備えた家を各メーカーに設計してもらったところ、やはりそのぶん建物が大きくなり、広い土地も必要なことがわかりました。土地費用がかさんだため、資金計画は9,600万円となりました。自己資金の2,000万円を引いて、住宅ローンの借入額は7,600万円、毎月の返済額は19万9,000円です。いまの住まいである築20年のマンションの家賃が22万円のため、月々の支払いはむしろ安くなります。
とはいえ、これまで正美さんも孝さんも職場までドアトゥドアで20分もかからずに通えていましたが、それぞれ電車で40分+徒歩20分と、通勤時間が大幅に伸びてしまいます。しかし、それを承知のうえで計画を進めていくことに決めました。
問題は実家の処分です。買い手がつくか不安でしたが、そう時間はかからずに地元の不動産業者から申し出がありました。300坪ある敷地に建売住宅を5棟に分譲して販売するらしく、自宅の解体費用は業者が負担、とのこと。850万円という値がつき、検討の末、その業者と売買契約を交わしました。850万円は母の老後資金の大きな足しになります。