
40年間連れ添った夫が他界…穏やかな老後が一変
年金を受け取りながら穏やかな日々を過ごしていた藤井久美子さん(仮名・65歳)。しかし、そんな日常はある日、夫の茂さん(仮名・67歳)が突然の心臓発作で亡くなってから一変しました。結婚40年。長年連れ添った夫を失った悲しみに暮れる間もなく、久美子さんは次々と押し寄せる現実と向き合っています。
茂さんと久美子さんは、いわゆる「理想的な老後」を送っていたといっていいでしょう。茂さんの年金額は月20万円。久美子さんの年金額は月15万円。手取り合計月30万円弱が夫婦の生活費。持ち家で住宅ローンは完済済み。二人の子どもも立派に社会人をしています。ゆったりした日常のなかで、趣味の旅行や外食などを楽しむ日々を送っていました。
そんなときに起きた悲劇。子どもたちが葬儀を取り仕切ってくれましたが、久美子さんはよく覚えていないそうです。ただ突然の出来事に、夢のなかにいるようだったといいます。葬儀が終わると、夢が現実だと思い知り、ただひたすら泣きました。しかしそのあとに襲われるのは今後の不安。夫婦で生きていくことが当たり前だと思っていました。それが突如ひとりに。「生活費は足りるのかしら」。現実的なことを考える自分に嫌悪感を覚えつつも。まずは年金の手続きを行うことに。
久美子さんが受け取れるのは遺族厚生年金。要件を満たしていれば、亡くなった人の老齢厚生年金の4分の3が受け取れます。また受け取る人が65歳以上の老齢厚生年金の受給権者であれば、「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と、自身の老齢厚生年金の額の2分の1の額を合算した額」と比べて、多いほうが遺族厚生年金の額になります。ただし、自身が老齢厚生年金を受け取れる場合、自身の老齢年金との差額分だけ遺族厚生年金が受け取れます。つまり「遺族厚生年金-自身の老齢厚生年金」を受け取れるということ。「自身の老齢厚生年金>遺族厚生年金」であれば「遺族年金の受取額はゼロ」ということになります。
久美子さんが受け取れる遺族年金は月2万5,000円。自身の年金と合わせて月17.5万円、手取りにすると15.3万円ほど。遺族年金の仕組みに納得いかない部分はありつつも、年金だけで久美子さんひとり分の生活費は賄うことができそうです。