万一への備えは重要とはいうものの、実際に備えている人は少数派。リアルにイメージすることは難しい、というのがひとつの理由。しかし、その万一が起きたとき、想定しないことが巻き起こることも珍しくはありません。
えっ、意味がわかりません「年金2人で月35万円」余裕の老後が一変。67歳夫の急死で発覚した「まさかの隠し事」に65歳妻、撃沈

混乱に追い打ちをかける一本の電話。そこで発覚する「夫の隠し事」

しかし問題が発覚したのは、その直後でした。自宅にかかってきた1本の電話。それは92歳の義母が入居する介護施設からでした。義母は認知症のため、3年前から介護施設に入っています。

 

――利用料の引き落としができません

 

そこでわかったのが、義母の介護施設の月額費用は、夫の茂さんの口座から引き落とされていたこと。引き落とし額は毎月15万円。義母自身の年金との差額、月8万円ほどを実質負担していたことになります。口座名義人が亡くなった場合、銀行が名義人の死亡を把握した時点で口座が凍結、原則として引き落としは終了します。引き落としを継続するためには相続手続き完了まで一時的に継続するなど、何らかの対応に迫られるでしょう。

 

――えっ、意味がわからない。何も聞いてない

 

茂さんが義母の介護費用を負担していたことは、久美子さんはまったく知りませんでした。茂さんは久美子さんに心配をかけまいと、黙っていたのでしょう。毎月8万円といえば、年金生活のなかでは、決して小さな金額ではありません。また今の久美子さんに義母の介護費用を負担する余裕があるのか、はっきりいって未知数。「義母の入居費用を私が払う義理はありません」と拒否したところで、身近に親戚もいない義母、誰も介護をしてくれる人などおらず、

 

――まさか、こんなことになるなんて……

 

老後の備えの大切さを痛感した久美子さん。まさか夫に先立たれるとは思っていませんでしたし、夫が義母の介護費用を負担していたことも知りませんでした。日頃からコミュニケーションを密にはしていましたが、お互い“領域”には踏み入れないようにしていたといい、それが夫婦関係を良好に保つ秘訣でもありました。しかし、それによって起きた「まさかの事態」。お互いの状況を把握しておくことが大切であるとともに、自身に万一のことがあったら残される家族が困ることのないよう、準備をしておくことが重要です。

 

[参考資料]

日本年金機構『遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)』

一般社団法人全国銀行協会『預金相続の手続の流れ』