
生活困窮の高齢者の現状
物価高騰が止まらない今、多くの高齢者が生活困窮に苦しんでいます。帝国データバンクによると、4月から値上げされる予定の食品は4,170品目に上り、主な原因は原材料費と人件費の高騰です。ティッシュやトイレットペーパーなどの消耗品も値上げされる予定で、専門家は、この先も値上がりの傾向は続くと予測しています。
かつては安定した生活を送っていた中野勝さん(仮名・78歳)も、物価高と低年金という二重苦にあえぐ一人です。
現在、中野さんの年金収入は月6万円強。年末まで組立工として働いていましたが、会社の業績不振により廃業し、15万円ほどの収入を失いました。生活費は心許ない預貯金の切り崩しで賄うしかなく、底をつく恐怖と隣り合わせの生活を送っています。
都内のアパートに住む中野さんですが、この春には家賃の値上げも決定。「電気代を節約するため、夜は真っ暗。風呂にも入れない日が続いています。自炊が苦手なので食事はもっぱらコンビニ弁当。最近は賞味期限ぎりぎりの割引品が助かります。ただ、電気もつけずに暗い部屋で食べていると、何のために生きているんだろうと、悲しくなることもしばしばあります」と、その厳しい現状を語ります。
元々、中野さんは父親の事業を継ぐ予定でした。しかし、バブル崩壊や中国の台頭による市場の変化に対応できず、50歳を前に倒産。年金保険料の支払いも困難になり、失業等による特例免除を受けました。その結果、老齢基礎年金は満額に至らず、生活支援給付金を加えても月6万円強にしかなりません。「父の仕事を継ぐのが当たり前だと思っていました。でも、振り返ると何も考えていなかった。先の明るくない業界だったので、遅かれ早かれ立ち行かなくなることは予想できたのに」と、中野さんは後悔を口にします。