
「教師こそ天職」と教壇に立ち続けていたが…
61歳の小学校の男性教諭が懲戒処分。そんなニュースを目にし、ため息をついたのは林優子さん(仮名・37歳)。北海道の小学校でのこと。その教諭は、低学年の男子児童2人を教室内に連れ戻したあと、さらにその児童2人が教室のなかを走り回ったため、児童2人の頭を右手で1回ずつ平手でたたいたとか。児童にけがなどはありませんでしたが、減給10分の1、1ヵ月の懲戒処分になりました。
全国ニュースではなかったものの、林さんが目にしたのは、自身が教師だったから。
――1年前まで、私も小学校の教師をしていました。だからでしょうか、自然と教師や教育にまつわるニュースを目にする機会が多くて
教室内でのトラブル、保護者からのクレーム、長時間労働……現在の教師を取り巻く環境はとてもよいとはいえず、たびたびニュースになっています。そんなことを耳にするたびに、「私も、あのとき、限界だったんだ……」と思い出し、胸が締め付けられるような感覚に襲われるといいます。
そもそも林さんが教師になった理由は、安定した職業だったから。
――うちは、どちらかといえば「お金がないから」と我慢をしなければいけない家庭でした。だから将来は安定した仕事に就こうと考えていました
安定しているといえば公務員。そのなかでも「教育」に関心があったので、教師になる道を辿りました。
――教育実習で子どもたちに触れ合い、「教師こそが天職」と思うことができました。すでに「教師は大変だ。なるべきではない」といった雑音が聞こえてくるような時代でしたが、当時は「どんな困難でも乗り越えられる」と、妙な自信をもっていました
大学卒業とともに、小学校教師となった林さん。教師は子どもたちの成長を間近で見られる、本当にやりがいのある仕事だと実感し、仕事を続ける原動力になりました。教師を辞める直前の月収は42万円ほど。「安定した仕事に就きたい」という思いは、しっかりと実現できていました。さらに児童思いで熱心な指導が評判の林さんは、子どもたちはもちろん保護者からも慕われ、充実した日々を送っていたといいます。
しかし近年、教育現場は大きく変化しました。