
年金の繰下げ受給を選んでよかった…73歳女性の場合
日本の公的年金制度は国民年金と厚生年金の2階建て構造となっています。国民年金は20歳以上60歳未満のすべての人が加入するもので、老齢基礎年金として支給。厚生年金は会社員や公務員などが加入するもので、老齢厚生年金として支給されます。これらの年金は原則として65歳から受け取ることができますが、希望すれば66歳以降に繰下げて受け取ることも可能です。これを「年金の繰下げ受給」といいます。
繰下げ受給をすると、1ヵ月繰り下げるごとに年金額が0.7%増額されます。たとえば、5年間(60ヵ月)繰り下げると年金額は42%増額されます。
70歳まで年金を繰り下げた森恵子さん(仮名・73歳)。65歳で受け取る予定だった年金は月13万円程度。ただ65歳以降も週4日のパートの仕事を続け、月10万円程度の給与を手にしていたことから、「給与があるから年金がなくても生活できる。仕事を辞めてから年金を受け取るようにしよう。年金が増えれば、仕事を辞めてからの生活も楽になるし」と、70歳になるまで年金を請求せずにいました。その結果、年金額は月額18.4万円に増額されました。
――税金や社会保険料を引いたら月15万円強。65歳から受け取っていたら月11万円ほどだったといいます。今は生活費をすべて年金でまかなうことができて、少し余るくらい。年金が増えなかったら、それだけでは生活できず、切り詰めるか、貯金を取り崩していくかしかなかったですね
昨今、物価高で「何を買うにも高い!」とあちらこちらから聞こえてきますが、それは森さんも同じこと。
――やっぱり気になるのはお米の値段よね。5キロ4,500円くらいになって、倍近くにもなった。それでも3食コシヒカリを食べることができている。それもこれも年金を繰り下げたからですよね
一方で、年金の繰下げ受給はデメリットがあるといわれています。そのひとつが、トータルの受取額を比較した際、亡くなるタイミングによっては65歳から受け取ったほうがお得ということ。そのため「繰下げ受給はやめろ!」という人も。それに対して森さんはピンと来ていない様子。
――トータルの受取額って……そんなこと意識しますか? 毎月毎月、きちんと生活できるかどうかのほうが重要だと思いますよ。死ぬときに「ああ、結局損をしたな」なんて、絶対思いませんよ