サラリーマンの頂点に立つエリートと呼ばれる人たち。将来への備えもばっちりで、無条件に定年後も働くことが決定している一般人からすると雲の上のような存在です。ただ現役を引退した後もエリート然としていられるとは限らないようで……。
情けない…〈退職金4,000万円〉〈最高年収2,000万円〉60歳・定年部長「いつでも飲みに誘えよ!」と豪快に引退したが、ビール1杯100円の居酒屋しか連れていけない「エリートの没落」 ※写真はイメージです/PIXTA

元エリートが連れていってくれた店は激安居酒屋、しかも時間はハッピーアワーを指定

サラリーマンのなかでもエリートだったからこそ実現できる、60歳定年退職。憧れの人……そんなイメージがガラリと変わったことが起きます。

 

――定年退職の日の言葉を額面通り受け取って、「飲みに行きましょう!」と誘ったんです。話はトントン拍子で進んでいき、実際に飲みにいったんですが……

 

指定された店は激安推しの居酒屋。しかも指定された時間は18時と飲み始めるには早い時間でした。実はこの店、17時から19時まではハッピーアワーで生ビールが100円になります。そこを狙ってきたわけです。

 

――今どき、100円で生ビールなんて。こういう店もいいものだろう! まあ、飲め飲め!

 

豪快に笑う元部長。飲み会に参加したのはほか、工藤さんと同僚。お家計は3人で6,000円ほどでしたが、すべて元部長が払ってくれました。元エリートとの飲み会だけあり、ためになる話ばかりで充実した時間を過ごせたといいます。しかし現役時代はよく高級店に連れていってくれた元部長との飲み会だけに、激安推しの居酒屋に拍子抜けだったといいます。

 

定年退職で嗜好が変わったのか……そういうわけではないようです。久々の再会で判明した事実がひとつ。それは元部長、30年来連れ添った奥さんと、定年後に離婚が成立。しっかりと財産分与し、さらに慰謝料の支払いもあるとか。それが結構な金額になったということ。

 

離婚に伴う慰謝料の金額に目安や相場はあるわけではなく、「婚姻期間」「婚姻の破綻原因がいずれにあるのか」「相手方の所有する財産額」などの要素を勘案し、決定されます。

 

裁判所『令和5年 司法統計年報(家事編)』によると、令和5年、全国の家庭裁判所の調停や審判によって成立した離婚件数は2万3,035件。そのうち慰謝料や財産分与についての取決めがなされたのは7,786件で、全体の33%でした。結婚年数が長いほど金額は高くなる傾向にあり、1,000万円以上が25%を占めます。あくまでも裁判にまで発展した離婚事例での話であり、その手前で成立した離婚においてはさらに金額が高くなると考えられます。

 

【金額分布/慰謝料・財産分与の取り決めのあった熟年離婚】

100万円以下…6.5%

200万円以下…6.9%

400万円以下…10.6%

600万円以下…16.7%

1,000万円以下…13.4%

2,000万円以下…17.7%

2,000万円超…7.2%

 

何をしたら、財産分与に慰謝料まで請求されるのか……そっちのほうが気になりますが、そのあたりははぐらかされ、明確な離婚理由はわからないといいます。

 

――エリートとして憧れの人でしたが、「こういう店もいいだろう」なんて見栄を張って、落ちぶれた感じになってしまって……正直いって、情けないなと思ってしまいました

 

会社ではエリートだからといって、プライベートでも同様とは限らない。定年後のサラリーマンにとって、かつての栄光が未来への安泰を約束しないという、現実の厳しさを如実に物語っていました。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和6年 高年齢者雇用状況等報告』

裁判所『令和5年 司法統計年報(家事編)』