いつか多くの人が直面する「親の介護」。自宅での介護を選択する場合も珍しくはありません。あらゆる介護サービスを活用するのがポイントですが、それでも負担がゼロになるわけではありません。また施設への入居と考えても本人に強い拒否感があり無理強いをさせるのは、と断念するケースも。重い介護負担、その先にあるものとは?
親を見捨てるつもりか!「年金月18万円」81歳元教師の父が48歳息子に大激怒。「老人ホーム入居」を断固拒否も納得するしかなかったワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

嫁からも「老人ホームに入って」と説得されたが…

会社では中間管理職として忙しくしている健一さん。親の介護を理由に業務が減ることはなく、なんとか両立させるしかありません。昼はデイサービスやホームヘルパーを利用。夕方くらいに健一さんが仕事をもって帰宅するとバトンタッチ。修一さんの面倒をみながら仕事もこなし、一日が終わるのは0時を回るという日々。誰の目からみても、明らかなオーバーワークでした。

 

――仕事を辞めることができたら

 

そんなことを考えることもありましたができるわけがありません。住宅ローンの返済、増え続ける子どもの教育費。自分たちの老後についても、そろそろ本気で備えないといけません。そんな生活が続いたある日、健一さんの妻が修一さんにお願いごと。

 

――お義父さん、お願いだから施設に入ってもらえますか?

 

自分が話すとまた反対されると義娘にいわせるとは……ますます気に食わないと、絶対に首を縦に振りません。

 

――以前、絶対に老人ホームは入らないと伝えている。何度もいわせるな

 

そう怒りを露にしても、健一さんの妻は食い下がりません。

 

――お義父さんがそんなんだから、健一さんが……

 

涙を流して怒り出す健一さんの妻。修一さん、どうも様子がおかしいとぎょっとしたといいます。話を聞いていくと、実は健一さん、メンタルヘルス不調で会社にいくことができなくなり、一時的に入院することになったといいます。仕事に介護にと、無理がたたり肉体的にも精神的にも限界を超えてしまった……思いもしない展開に、言葉をなくした修一さん。「自分がワガママを通したことで息子が……」。老人ホームへの入居するしかない現実に直面するばかりか、自分が我が子を追い詰めてしまったことに呆然とするしかなかったといいます。

 

精神的にも穏やかさを取り戻した健一さん。3ヵ月ほどの休職したあと仕事に復帰。老人ホームに入居した父・修一さんからは、何度も何度も謝られたといいます。

 

――父はもういいというのに、何度も謝っていました。でも本当は住み慣れた家にいたい、誰もが思うことをいっていただけなんですよね。思いを叶えてあげられず、申し訳ない気持ちでいっぱいです

 

子が親を思う気持ちを叶えるのも、大変なことです。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和元年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業』