奨学金返済のために諦めたこと
結婚式
就職後、Aさんは大学時代から交際していた女性と結婚した。
「妻には本当に申し訳なかったですが、今後のことを考えて、結婚式は行わずに貯金に回すことにしました」と、当時を振り返るAさん。
2人目の子ども
人生の三大支出のひとつともいわれる教育費。子を一人育てるだけでも最低1,000万円はかかるといわれる時代だ。
「本当はもう1人欲しかったです。妻も自分も一人っ子だったので、きょうだいを作ってあげたいという思いはありました。そもそも1人目を作る前から、金銭的な理由で躊躇もありました。当然、2人目は断念することにしたんです」
住む場所の選択肢
子どもに恵まれたタイミングで、当時住んでいたアパートを離れ、Aさんの母親と同居することに決めた。
「子どもの教育費を確保しなければいけないという思いや、共働きだったため子どもの面倒をみてほしいという気持ちもあり、同居を決断しました」と語る。
教育費の高騰
昨年、Aさんの息子は高校に入学した。大学進学を見据えて自身が卒業した国立大学の学費を確認したAさんは、その金額に驚いたという。自身が大学に入学した1996年と比べて、授業料が約12万円も値上がりしていたからだ。さらに調べると、滑り止めで私立大学を受験する費用や、国公立大学の合否発表前に納めなければいけない入学金、受験のための交通費や宿泊費など、多くの費用がかかる。
「自分の時代とはまったく違う環境だと感じました。大学進学が一般的になっている一方で、これほどまでにお金がかかることを改めて実感しました。これでは国立大学でも自分たちの稼ぎだけでは無理です。大学生の約半数が奨学金を借りざるを得ないのも納得できます」と語る。
Aさんの収入は、現在手取り月41万円。妻が新卒で入社した会社は2000年代後半、リーマンショックの影響により倒産。そこからは派遣やパートなどの仕事を転々としており、安定的な収入は見込めない状況だった。