内閣官房が2024年12月に「就職氷河期世代支援の推進に向けた全国プラットフォーム」で公表した資料によると、40代の就職氷河期世代の正社員率はバブル世代と同水準まで改善した。しかし、依然として就職氷河期世代の多くの人が不安定な状況に置かれている。その影響は子ども世代にもおよび、教育費や進学、将来への不安など、さまざまな困難に直面している。本記事では、就職氷河期世代のAさんの事例とともに、子へ連鎖する経済的困窮について、アクティブアンドカンパニー代表の大野順也氏が解説する。
父さんの収入じゃ無理だ…熾烈な争いに勝利、氷河期世代の47歳公務員父「手取り月41万円」で高1息子に懺悔。「国立大」への道すら絶たれる絶望的現実

現代の若い世代について思うこと

現在47歳のAさんは、5年前の42歳のときに奨学金を完済した。「奨学金の返済のために諦めたことは多かったが、苦労した分、得られたことも多かった」と語る。そして、息子には奨学金を借りてもらうことを想定しているという。

 

「奨学金返済の苦労は身にしみてよく理解しているが、自分は奨学金を借りたからこそ進学できたし、就職後はまじめに働いて、きちんと完済できた。息子にも奨学金を背負わせることになるという話は、いまのうちに伝えた。同級生など周りの子をみるとお金の心配をしていない子もいる。そんななか息子に負担をかけることを申し訳ない気持ちもあることも伝えた。母の当時の気持ちがいまになってよくわかる……。息子には一生懸命勉強して、少しでもいいところに就職してほしい」と話す。

 

昨今の物価や学費の高騰、横ばいの実質賃金、少子化といった時代の変化についてどう思うかを尋ねると、「自分たちの時代の絶望とはまた違った大変さがあると思う。奨学金の返済が足枷となり、大学進学や結婚・出産を諦めるようなことがあってはならない。新たな絶望的現実を前にした若者たちには、国や大学の支援が必要だろう」と語った。

奨学金問題解決への糸口

Aさんのいうように、学費の高騰などにより奨学金を利用する若者は増加傾向にある。日本学生支援機構(以下、JASSO)によると、令和5年には大学生の3人に1人が奨学金を利用しているという。奨学金=借金のイメージを持つ人は多いが、経済的に借りざるを得ない家庭も多いことがうかがえる。

 

こうした状況をサポートするため、JASSOによる返還期限猶予(一定期間、返還月額を減額し、適用期間に応じて返還期間を延長する制度)や減額返還制度(返還月額を減額して返還する制度)といった仕組みに加え、企業の取り組みも増えている。福利厚生の一環として、独自に従業員の奨学金返済を支援する企業や、JASSOの「奨学金返還支援(代理返還)制度」を導入する企業も増加しており、その数は2024年12月末時点で2,781社にのぼる。

 

今回のインタビューを通じて、未来を担う若者が高等教育を受ける機会を確保するためには、国や大学だけではなく、社会全体での支援が必要であることを改めて認識した。

 

 

大野 順也

アクティブアンドカンパニー 代表取締役社長

奨学金バンク創設者