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「大学」ではなく「専門学校」を選んだ理由
Aさんは関東地方出身の29歳男性。現在は東京で営業事務として働いている。2人兄弟の長男として育ったが、小学校低学年のころに両親が離婚し、母子家庭となった。母親は早朝から夜遅くまで働き詰め、弟は部活に打ち込み、祖母は入退院を繰り返していた。そんななか、Aさんは勉強に励み、成績優秀で地域有数の進学校に進学。周囲は大学進学を当然視していた。
しかし現実には、家計を支える存在としての責任が常に頭にあった。「4年間、大学に通い続ける余裕はない」進学そのものに迷いが生じたが、最終的にAさんは、できるだけ早く社会に出て母親を助けたい、そして弟に負担をかけたくないという一心で、2年制の専門学校への進学を決断したのである。
専門学校では、どの企業でも通用する汎用的なスキルを身につけるため、バックオフィス系の学科を選んだ。周囲の学生も当たり前のように奨学金を利用しており、奨学金=借金という認識も薄かった。高校の進路指導でも「奨学金を使って進学するのは普通」といわれ、専門学校の説明会でも奨学金利用が前提となっていた。
Aさんは日本学生支援機構の第二種奨学金を毎月12万円借り、2年間で約280万円を学費に充てた。さらに週4日で飲食店のアルバイトを続け、母親に生活費を渡していたため、自分が自由に使えるお金はほとんどなかったという。就職活動では、家族を支えるためにも「少しでも給与が高い会社」を優先した。しかし求人をみていると、大卒と専門卒の初任給やキャリアの差が目に入り、自分の選択に複雑な感情を抱いた。それでも家族のためにと、資格取得と就活に励んだのである。