長年連れ添ったパートナーを亡くし心にぽっかりと穴が開く……いずれ多くの人が経験することです。ただ悲しんでばかりはいられません。その先、きちんと生活していけるか……まずはお金の不安に襲われるでしょう。亡くなった配偶者が元会社員・公務員であれば、遺族は遺族厚生年金を受け取れる可能性が高いですが、よく聞く“遺族年金の噂”には、思わぬ落とし穴が潜んでいます。
〈年金月19万円〉67歳夫「いってきます」と言い残し急逝。慟哭の66歳妻「遺族年金は夫の年金の4分の3」と聞いたが…年金事務所で判明した「少なすぎる遺族年金額」に呆然 (※写真はイメージです/PIXTA)

複雑すぎる「遺族年金の計算」に一喜一憂

まず職員からいわれたのが、受け取れるのは「遺族厚生年金」であり、亡くなった人の老齢厚生年金の4分の3であること。浩さんの年金月19万円のうち、基礎年金6.8万円を引いた12.2万円が厚生年金。それの4分の3だから9.15万円になります。

 

――えっ、思っていたよりも5万円も少ない

 

さらに65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利がある人が、遺族厚生年金を受け取る場合、「①死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と「②死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の老齢厚生年金の額の2分の1の額を合算した額」を比べて、高いほうの額が遺族厚生年金の額となるといいます。

 

①は9.15万円、②は9.7万円。よって遺族厚生年金は9.7万円となります。

 

――えっ、5,000円以上増えた

 

また65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金を受ける権利がある場合、老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止。つまり、智子さんの老齢厚生年金月7.2万円は全額支給となり、差額となる2万5,000円ほどが支給されることになります。

 

――えっ、7万円近くも減った

 

計算の過程で減ったり増えたりとしましたが、最終的には当初想定していた年金額の5分の1以下の額に。これには智子さんも呆然としてしまったといいます。

 

――まあ、2万5,000円でももらえるならありがたいけど。月14万円くらいと思っていたので、正直、落胆は大きいです

 

遺族年金の認知度は高いものの、その計算は難しく、実際の支給額はなかなかすぐにはわからないもの。皮算用は禁物です。

 

[参考資料]

内閣府『生活設計と年金に関する世論調査』

日本年金機構『遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)』