(※写真はイメージです/PIXTA)
半世紀近く働いてきて「年金はたったこれだけ…」とため息
満足のいく会社員人生でしたが、年金生活のスタートは少々残念なスタートだったといいます。
最初の年金振込日。年金額は老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせて32.7万円、1ヵ月あたり16.3万円ほど。ただこれは額面で、税金や社会保険料などが月3万円ほど引かれていました。
――天引き後の金額をみて、思わずため息を漏らす……会社員のときと変わらないなと思いましたね
老齢年金は雑所得にあたり課税対象。さらに国民健康保険料や介護保険料といった社会保険料も払わないといけません。年金受取額はいくらか……毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」の記載額を参考に、老後のマネープランをシミュレーションしている人も多いでしょう。しかし、そこに記載されている金額は額面であり、天引き後の金額を初めての年金支給日に知って愕然とする人は、もはや2ヵ月に1度の風物詩といったところ。
もし石井さんがその1人だったとしたら、月に3万円の誤差は年に36万円、10年で360万円、20年で720万円……大きな誤差になり、毎日の生活にも大きな支障をきたすことは目に見えています。
――思わずため息は出ましたが、私の場合、先に妻が年金を受け取っていたので「こんなもんだろう」という思いもありました。年金に期待するだけ無駄ですよ
実際の石井さんは、年金の受取額として知らされている金額は天引き前であることを重々承知のうえだったので、戸惑いなどはありませんでした。ただ、残念な気持ちにはなったといいます。
――年金の受取額が少ないのは、私の給与が少ないせいなので仕方がありませんが、半世紀近くの間、真面目に働いてきたのに受け取れる年金は「たったこれだけ……」という気持ちはありますよ
日本の年金は賦課方式。年金支給のために必要な財源を、その時々の保険料収入から用意するものです。積立方式ではないので、初めて年金を受け取った人のなかには「あんなに保険料を払ってきたのにこれだけ!?」と憤りを感じる人も少なくありません。
賦課方式はインフレや給与水準の変化に対応しやすいというメリットがある一方で、現役世代と年金受給世代の比率が変わると、保険料負担の増加や年金の削減が必要というデメリットも。一方で積立方式は運用収入を活用できるという一方で、インフレによる価値の目減りや運用環境の悪化がある年金の削減が必要となるデメリットがあるといわれています。
どちらにせよ、これから先、年金減は確実。石井さんのように「こんなに真面目に働いてきたのに……」と肩を落とす人も増えていきそうです。
[参考資料]