(※写真はイメージです/PIXTA)
繰上げ受給で年金3割減。さらに遺族年金は4分の3と思っていたが…
夫の急逝で、由美子さん、思うことはいろいろ。
――もっと体のことを気にかけてあげればよかった
――もっと体のことを考えて食事をつくってあげたらよかった
いろいろな後悔のなかには、「年金の繰上げ受給なんてさせるんじゃなかった」というものも。なぜ、そう考えているのかというと遺族年金。由美子さんの場合、厚生年金に由来する「遺族厚生年金」を受け取れる可能性がありました。遺族厚生年金の受取額は、年金の4分の3とよく知られています。しかし誠さんが受け取っていた年金は、本来の年金額の3割減。遺族年金はさらに4分の3……月々6万円弱。たったこれだけです。「こんなに早くひとり残されることがわかっていれば、年金の繰上げなんて賛成していなかったのに」と、後悔の念が止まらなかったといいます。
とはいえ、いつまでも嘆いていても仕方がありません。もらえるもんは早くもらっておいたほうがいい……由美子さん、遺族年金の手続きをしに、年金事務所を訪れます。しかし、そこで予想だにしなかったことが起きます。想像以上に遺族年金が多いことが判明したのです。
――遺族厚生年金は、老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3に基づいて計算します。繰上げ受給で減額された金額を基準にするわけではないのですよ
つまり、由美子さんが手にする遺族厚生年金は3割減となる前の遺族厚生年金の4分の3。つまり繰上げ受給時の厚生年金7.8万円ではなく、65歳から手にするはずだった11.2万円に対する4分の3=8.4万円だというのです。
さらに誠さんは60歳以降も厚生年金に加入していたため、その分、老齢厚生年金は増額。それを加味して65歳時点での老齢厚生年金をベースとするので、実際の遺族厚生年金は8.4万円よりも多くなります。
――阿部さんの場合、中高齢寡婦加算もあると思います
これは、たとえば「夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻」が遺族厚生年金を受け取る場合、妻が40歳から65歳になるまでの間、年間61万2,000円、月々5.1万円が加算されるというもの。
てっきり6万円弱の遺族年金しかもらえないと考えていた由美子さん。蓋を開けてみたら、13.5万円プラスα。不謹慎ながらも、思わず喜びの声をあげたといいます。
複雑な年金制度。ルールにより思っていた以上に年金がもらえないということがよくあります。しかし由美子さんの場合はその逆だったようです。しかし遺族厚生年金を受けられるようになった妻が65歳前で妻自身が年金を受け取っていた場合、自身の年金と遺族厚生年金、いずれかを選択して受給しなければならず、両方は受給できないというルールがあるので注意が必要です。
[参考資料]