複雑で難しい日本の年金制度。ときに大きな勘違いにより、「そんなはずではなかったのに!」という事態に直面することがあります。それは大切な人を亡くしたあと、残された遺族が手にする「遺族年金」でも。
年金の繰上げ受給なんてさせるんじゃなかった…〈年金月12万円〉65歳夫が急性心筋梗塞で急逝。60歳妻、後悔の念も、年金事務所で聞いた「まさかの遺族年金額」に歓喜 (※写真はイメージです/PIXTA)

「もらえるものは早くもらっておいたほうがいい」と繰上げ受給を選択

阿部由美子さん(仮名・60歳)。5歳年上の誠さん(仮名・65歳)は、60歳から年金を受け取っていました。年金の受給開始は原則65歳。一方、希望すれば60~75歳(昭和27年4月1日以前生まれは70歳)の間で、受給開始年齢を決めることができます。60~64歳と、原則よりも早く受け取ることを「年金の繰上げ受給」と呼び、1ヵ月受給開始を早めるごとに0.4%(昭和37年4月1日以前生まれは0.5%)減額となります。

 

なぜ年金が減るとわかっていながら、夫・誠さんは繰上げ受給を選んだのでしょうか?

 

――「人間、いつ死ぬかわからないのだから、もらえるもんは早くもらっておいたほうがいいだろ?」と夫が……私も「確かに一理ある」と考え、特に反対はしませんでした

 

【年金の繰上げ/繰下げの現状】

■厚生年金保険(第1号)の受給権者

繰上げ…25万9,815人(0.9%)

繰下げ…44万5,178人(1.6%)

■国民年金受給権者

繰上げ…356万6,736人(10.4%)

繰下げ…75万8,579人(2.2%)

※出所:厚生労働省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』

 

毎年、誕生月に送られてきていた「ねんきん定期便」によると、65歳から受給開始となると、老齢基礎年金と老齢厚生年金と合わせて月18万円。誠さんは昭和37年4月1日以前生まれのため、減額率は0.5%。最大30%の減額となります。60歳から受給開始としたので月々12.6万円ほどを受け取ることができたといいます。

 

年金の繰上げ受給を始めたあとも、仕事を続けた誠さん。「家にいても暇なだけだから。それなら仕事してお金もらったほうがいいだろ」と、65歳の誕生日を迎えたころまで働いていました。

 

過去形ということは、現在は働いていないということ。仕事から引退したわけではなく突然死。急性心筋梗塞だったといいます。

 

――人間いつまで生きられるかわからないって……だからといって、そんなに早く死ぬ必要はなかったのに