学校を卒業以来、会社のために頑張ってきたサラリーマン。その多くは60歳を機に定年を迎えます。そのまま仕事を続けるのか、それとも引退するのかは人それぞれですが、ひとつの区切りとして家族に「ありがとう」を伝える日でもあります。しかし、そんな言葉を届けられないケースも珍しくないようです。
今日ですべて終了です…〈退職金3,600万円〉を手に大手建設会社を去る〈60歳定年部長〉。これからは妻孝行を誓うも、自宅はもぬけの殻「これは夢なのか?」

定年退職の日に勃発した離婚話…妻の言い分

しかし、定年後の妻孝行を誓った橋本さんですが、実現させることはできませんでした。現在、橋本さんは離婚協議中。定年退職の日、帰宅すると、奥さんの部屋はもぬけの殻。リビングなどからも、奥さんの痕跡は消え、テーブルには離婚届けと、自筆の書き置き。

 

――私の務めは今日ですべて終了です

 

何が起きているのか、しばらく理解できなかったという橋本さん。「これは夢なのか……」。しばらく、現実のことと思えなかったといいます。

 

厚生労働省「人口動態統計」では、同居期間が20年以上の夫婦の離婚を「熟年離婚」として分類としていますが、2022年の離婚件数全体は約17万9,099件で、そのうち熟年離婚は3万8,991件。全体の約23.5%を占めています。2023年には3万9,812組と、熟年離婚は高止まりしている状況です。

 

熟年離婚の増加と高止まりには、いくつかの要因が考えられます。

 

▼経済的独立

特に女性の経済的自立が進んでいることが、熟年離婚の増加に寄与しています。多くの女性が職を持ち、経済的に自立することで、結婚生活に対する耐性が低下していると考えられています。

 

▼子育ての終了

子どもが独立した後、夫婦間のコミュニケーションが減少し、関係が冷え込むことが多いです。子育てが一段落したことで、夫婦が再評価を行い、離婚を選択するケースが増えています。

 

▼長寿化とライフスタイルの変化

平均寿命の延びにより、夫婦が共に過ごす時間が長くなり、性格の不一致や生活スタイルの違いが顕在化することが多くなっています。

 

▼性格の不一致

離婚理由のなかで最も多いのが「性格の不一致」であり、男女ともにこの理由が大きな要因となっています。

 

また離婚でないものの、夫婦が離婚せずに婚姻関係を維持しながら、互いに干渉せず自由な生活を送る新しい形態の夫婦関係である卒婚が浸透したように、夫婦のカタチに拘らない社会へと変わってきたことも、熟年離婚の増加に寄与しているといわれています。

 

――これまで家庭生活を一緒に送ってこなかった人と、どうやって老後を一緒に過ごすのか。考えるだけで寒気がする

 

これが橋本さんの奥さんが離婚を切り出した理由。寒気がする……もう修復のしようがないように思えますが、「何とか離婚を踏みとどまってくれないか」と必死の説得が続いているといいます。

 

 

[参考資料]

厚生労働省『令和4年就労条件総合調査』

厚生労働省「人口動態統計」