奨学金は、多くの若者にとって大学進学のための重要な資金源だ。しかし、返済に苦しむ現状を知らない人も少なくない。大学生の奨学金に対する意識や、奨学金の返済が進学・就職・キャリア形成にどのような影響を与えるのだろうか。本記事では、AさんとBさんの事例とともに、奨学金返済の現状と社会的課題について、アクティブアンドカンパニー代表の大野順也氏が解説する。
奨学金を借りたせいでやりたい仕事に就けなかった…毎日納豆生活で栄養失調に。月収21万円、22歳上京女性の後悔「月1万円が足枷」

奨学金を借りたけれど…

高校2年生のとき、将来の選択肢を広げるために大学進学を決めたBさん。しかし、親からは「奨学金が借りられるなら借りて、生活費に充ててほしい」といわれた。家庭の経済状況を考えた結果、高校2年生の時点で奨学金を借りることを決断した。

 

Bさんは当時のことを、「大学へ行って一人暮らしをするつもりだったが、働いた経験もなく、一人暮らしの生活費がどのくらいかかるのか想像もつかなかった。奨学金は借金というイメージで不安もあったが、大学へ行かないという選択肢はなかった」と振り返る。

 

大学生活と奨学金の活用

上京してからは奨学金として毎月5万円を受け取りながら、週4日ほど居酒屋でアルバイトをしており、月のアルバイト代は約8万円。この13万円の中から、家賃や光熱費を支払い、残りの金額からサークル活動費や交際費も支払う。Bさんの場合、奨学金の振り込み日は毎月10日ごろ、アルバイトの給料日が15日なので、月の前半はいつも懐が寂しく、納豆ばかりの生活になった。

 

就職活動と金銭的な負担

大学2年生の後半から、インターンシップを始める友人も出てきて、Bさんも就職活動に向けた準備を進めるようになった。大学3年生になると、就職活動が本格化し、会社説明会や企業研究に時間を割いているが、その影響でアルバイトの時間を確保することが難しくなった。

 

「面接が始まると、さらに時間が取られる。移動に伴う交通費もかかるため、金銭的にも厳しい。すでに内々定をもらっている友人もいたので、焦りを感じた」とBさんは話す。

 

また、卒業後に始まる奨学金の返済についても、「就職したら給与や手取りがどれくらいかはわからないどころか、就職できるかどうかもわからない。どのような仕事をやりたいかではなく、奨学金をきちんと返済できるかどうかが重要になってきている」と語る。奨学金を借りて大学へ行く選択をしたBさんは、近づきつつある奨学金の返済に怯えた。結局、あまり興味のない業界の一番早く内定が出た初任給21万円の企業に就職。

 

「もっと自分のやりたいことを考えて進路を選んでいればよかった。奨学金の月の返済額は1万円ちょっと。でも、お金のことが頭から離れず、焦ってしまって……。食費も削っていたので毎日フラフラしていました。追い詰められて、自分が本当にやりたかった仕事じゃないところに進んでしまった」後悔を語る。