奨学金は、多くの若者にとって大学進学のための重要な資金源だ。しかし、返済に苦しむ現状を知らない人も少なくない。大学生の奨学金に対する意識や、奨学金の返済が進学・就職・キャリア形成にどのような影響を与えるのだろうか。本記事では、AさんとBさんの事例とともに、奨学金返済の現状と社会的課題について、アクティブアンドカンパニー代表の大野順也氏が解説する。
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大学授業料の高騰と奨学金の負担増加

授業料引き上げの動き

2024年12月、日本経済新聞では、2025年度以降に約4割の大学が授業料引き上げを検討していることが報じられた。物価高騰による光熱費・人件費の上昇、教育・研究環境の改善やDX化への投資による国際競争力の強化が要因だ。授業料引き上げは学生やその家族に直接的な影響を与え、奨学金に頼る学生の割合は今後さらに増加するのではないだろうか。

 

現在の奨学金利用状況

奨学金を借りている学生からは、以下のような声があがっている。

 

・アルバイトを掛け持ちして生活費を捻出している

・貯金しなければならないと食費を削りすぎたことで栄養失調になり入院した

・就職のプレッシャーから精神的に追い詰められ、休学している

 

こうした現状を踏まえると、単に奨学金の貸与を増やすだけでなく、返済支援の仕組みを拡充する必要があると考えるのは当然ではないだろうか。

奨学金返済がキャリア形成や人生設計に与える影響

奨学金の返済負担が若者の選択を制限

賃金の伸び悩み・物価高騰・社会保険料の増加・企業の大卒前提の採用戦略など、若者は厳しい経済環境に置かれている。奨学金の返済負担がキャリア選択の自由を制限し、結婚・出産に消極的になる要因にもなっていることを考えると、この問題は個人の責任ではなく、社会課題としてとらえるべきではないだろうか。

 

社会全体で支える持続可能な就学・就職サイクル

その一つが、地方自治体や民間企業による奨学金返済支援制度の導入だ。具体的な取り組みとしては、以下のようなものがある。

 

・企業が奨学金返済を支援する「奨学金代理返還制度」

・大学や地方自治体による奨学金制度の拡充

 

奨学金の返済支援は、単に個人の負担を軽減するだけでなく、少子高齢化対策や多様な人材活用の推進にもつながる。単なる福祉政策ではなく、日本の将来の競争力強化にも寄与する。社会全体でこの課題に取り組む必要があるだろう。

 

 

大野 順也

アクティブアンドカンパニー 代表取締役社長

奨学金バンク創設者