どんなに時代が変わろうとも、普遍的といえるのが嫁と姑の関係。なんともいえない緊張関係にあることが多いですが、突然「義母が老人ホームに入居する」ことによって、突然、終わりを告げることがあります。ただ、それが本当に終わりかは誰もわかりません。
〈年金16万円〉30年同居の82歳義母がついに「老人ホーム入居」を決断。56歳嫁、心のなかで小さくガッツポーズも、わずか5ヵ月で退居の絶望「何かの間違いでは?」 (※写真はイメージです/PIXTA)

友人に誘われて義母「老人ホーム」に入居も…5ヵ月に「ただいま」

バリアフリーのリフォーム、さすがにここもあそこもと欲張りすぎたと反省し、本当に必要なバリアフリーは……と井上さん夫婦が話し合っていると、義母がひと言。

 

――私、ホームに入ることにしたわ

 

耳を疑う言葉。義母自ら老人ホームに入ると言うはずがないと思っていたので、空耳かと思いました。義母は仲のいい友人から誘われて、一緒に老人ホームを見学。意気投合し、ともに入居することにしたのだとか。すでに手続きは始めているといいます。入居一時金は80万円、月額費用は22万円。毎月の年金は15万円ほどですが、貯蓄を取り崩していけば、15年は入居していられるとか。

 

仲のいい友人と一緒なら、ホームでの生活も楽しいだろう。何よりも何百万もかけてリフォームしたところで、どれくらい生きられるかわからない、お金がもったいない。ホームであれば、安心・安全に暮らせる。お互い(井上さん夫婦と義母)にメリットがあるだろう……と義母。

 

義母とのギクシャクした日々から解放されることになった井上さん。心のなかで小さくガッツポーズ。こうして快適な毎日がスタートしたのでした、めでたし、めでたし……とはいきませんでした。

 

義母がホームに入居してから5ヵ月後。急に、義母が家に帰ってきました。そして「ホームは退去することにした」といったのです。

 

――えっ、仲のいいお友だちは?

 

実は、ホームに入居するきっかけとなった友人が入院。状態はよくなく、このまま……ということもありえるといいます。そもそも入院が長引けば、ホームは退去しなければなりません。「友だちがいないなら、ホームにいても仕方がない」と、退居を決めたのだとか。

 

【よくある「老人ホーム退去要件」4つ】

①医療的ケアの必要性

胃ろうやたん吸引、透析など、特別な医療行為が必要になる場合、施設では対応できず、その医療行為に対応した施設への転居が求められます。

②長期入院

入院が長期にわたる場合、一般的に3ヵ月以上の入院が必要になると、施設側から退去を勧告されることがあります。

③他の入居者や職員への迷惑行為

認知症などの影響で、他の入居者やスタッフに対して暴言や暴力を振るったり、大声を出したりする場合、施設側が対応できなくなり、退去を求められることがあります。

④経済的理由

施設の利用料金の支払いが困難になった場合も、退去の理由となります。支払いが滞ると施設からの督促があり、最終的には退去勧告が出されることがあります。

 

義母との同居から解放された日々は、突然終了。また心をざわつかせる、愚痴や嫌味を聞く日々が始まると思うと、絶望感を覚えるという井上さん。たまらず泣いてしまったといいます。

 

 

[参考資料]

国立社会保障・人口問題研究所『2019年社会保障・人口問題基本調査』