
認知症の症状進行で、在宅介護に不安感拡大
実の母が介護付き老人ホームに入居していたという林和也さん(仮名・50歳)。ホーム入居のきっかけは認知症。
ある日、林さんが実家に帰り、くつろいでいると、母は「いつ帰ってきたの?」と不思議そうに尋ねました。さっき「ただいま」といったのに、母はそのことをすっかり忘れてしまったようでした。また食事の準備を手伝おうと「今日は何を作るの?」と聞いたら、母は「まだ何も考えていないわ」といいました。以前ならすぐにメニューを思いつくことができたのに……またその夜、母が急に不安そうな表情を浮かべていることに気づきました。「どうしたの?」と尋ねると、「最近、物をよく忘れるのが怖いの」といいました。「大丈夫だよ、みんな年を取るとそうなるから」と励ましましたが、母の不安は消えなかったといいます。
さすがに様子がおかしいと思い、病院に連れていくと初期の認知症と診断されました。現在、林さんの母は要介護2。金銭管理や服薬の管理においてサポートが必要であり、徘徊や不安定な行動が見られることも。入浴や排泄などの基本的な動作に対しても介助が必要になっています。
【現在の要介護度別にみた介護が必要となった主な原因】
■要介護1
認知症…26.4%、脳卒中…19.0%、骨折・転倒…13.0%
■要介護2
認知症…23.6%、脳卒中…17.5%、骨折・転倒…11.0%
■要介護3
認知症…25.3%、脳卒中…19.6%、骨折・転倒…12.8%
■要介護4
脳卒中…28.0%、骨折・転倒…18.7%、認知症…25.3%
■要介護5
脳卒中…26.3%、認知症…23.1%、骨折・転倒…11.3%
※出所:厚生労働省『令和4年度国民生活基礎調査』
以前、母親が「自宅で死ねたら何もいうことはない」といっていたことを覚えていた林さん。要介護であっても施設に預けることには消極的でした。日中はデイサービスを使うなど外部の力を借りていますが、林さん自身もできるだけ手を貸せるようにしています。ただ認知症の症状が進んでいくと、在宅での介護に限界を感じ始め、ホームへの入居も検討するようになったといいます。