60歳で定年を迎えるケースが多いなか、その後、再雇用で働き続けるか、退職して無職になるかはさておき、多くの人が定年退職金を受け取ることになります。経験したことのない大金を貯金するか、それとも運用するか、選択に迫られますが、できることなら後悔のない方法を選びたいものです。
銀行の言うことを鵜呑みにして…バカだな。〈退職金2,700万円〉の60歳定年サラリーマン〈貯金第一主義〉も一転〈退職金で資産運用〉へと突き動かした「銀行員のひと言」 ※写真はイメージです/PIXTA

銀行から勉強会の誘い。そこでも「貯金一択」と答えたが…

山本さんのもとにかかってきたのは、退職金の振込口座のあった銀行から。「老後資金についての勉強会があるので、参加してみたいか」というものでした。信頼している銀行からのお誘いなので、何か役に立つ情報が得られると思い、参加してみることにしたといいます。

 

勉強会は定年後の生活設計について、いろいろとアドバイスがもらえて、とても有意義なものだったとか。そのあと、銀行員に個別に話しかけられた山本さん。そこで「退職金の運用はどうするのか」と尋ねられたといいます。そこで「貯金一択であること」を伝えると、いったん銀行員は「そうなんですね」とにっこり。その後もいろいろと話すなか、山本さんは最近、長男のもとに子どもが生まれたことを嬉しそうに話したといいます。

 

――孫は目に入れても痛くないといいますが、本当ですね

 

そんな山本さんに対し、銀行員は「そんなお孫さんのためにも、大切なお金を残していきたいですよね」とひと言。その言葉を聞いてハッとしたといいます。

 

――それまで退職金は私たち夫婦のために使うことだけを考えてきました。孫のために残すという発想はありませんでした

 

かわいい、かわいい孫のため。できることなら、より多くのお金を残してあげたい……そのためにはどうしたらいいのか? そのようなことを考えていると、銀行員から退職金を運用するための特別なプランがあることを提案。破格の高金利の定期預金で、投資信託購入が条件というものでした。

 

――投資したこともありませんし、一度は躊躇しました。でも、銀行の言うことだから間違いないと思ってお任せすることにしました

 

退職金の半分を定期預金、半分を投資信託の購入に充てた山本さん。そのことを、いまなお再雇用で働いている職場の同期に話したところ、「お前が投資を!?」と驚かれたといいます。

 

――私を古くから知る人からすると、相当、驚きだったようです

 

一方で同期は「そういう退職金プランは手数料が高いと聞くけど、よく話に乗ったな」とひと言。初めて銀行から提案されたプランの商品性を知った山本さん。自身が利用している退職金プランを今一度確認すると、定期預金の金利は6ヵ月5%、一方で投資信託の購入手数料は3%。すでに投資信託購入時の手数料が定期預金の利息を上回り、投資信託の取引の際の手数料も一般的なものと比べると高いことを理解することができたといいます。

 

――銀行だから安心という気持ちは変わりません。ただ銀行の言うことをただ鵜呑みにして……バカだったなと、自分を責める気持ちでいっぱいです

 

いまのところ、順調に資産は殖えているといいますが、どこか不安な気持ちが常にあるといいます。心の安定を手放し、かわいい孫のために多くのお金を残せる可能性にかけた山本さん。一から資産運用の勉強を始めているといいます。

 

 

[参考資料]

※出所:厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』