(※写真はイメージです/PIXTA)
定年後の夫婦の生活、経済的な懸念はなかったが…
年金の繰上げ受給を選択することにしたという森さん。年金の繰上げ受給は、老齢年金を本来の受給開始年齢である65歳よりも早く受け取る制度。60歳から65歳の間に手続きを行うことで、年金を早期に受け取ることが可能になりますが、その際には年金額が減額。減額率は1ヵ月につき0.4%で、最大24%の減額となります。
なぜ、年金の繰上げ受給を選んだのでしょうか。
――私も妻も繰り上げたら、手取りで月21万円強になる計算です。つまり、60歳からでも年金だけで暮らしていける。年金で生活費をカバーできるなら、退職金も減らすこともなく、万一の際の貯金は4,400万円になる。心の余裕が違いますよね
老後に向けて着々と進めていた森さんですが、実際に定年を迎えてからは波乱続きだったといいます。
まず定年で会社を退職することを妻・明美さんには相談することなく決めてしまい、険悪なムードに。さらに年金の繰上げについても説明しておらず、「何でそんな重要なこと、1人で決めるのよ!」と大目玉をくらったといいます。
さらに極めつけは、妻・明美さんから出てきた離婚話。定年以降、ほぼ家にいる森さんにストレスを感じていた明美さん。小さな喧嘩も絶えないようになり、「もう無理、限界!」と離婚届をたたきつけられました。
――何度、「何かの間違いだろ?」といっても、「もう無理」の一点張りで
離婚となれば、婚姻期間中に築いたものであれば財産分与の対象。マイホームも、さらには年金も対象です。定年からわずか半年しか経っていないタイミングでの急展開でした。
定年から6ヵ月で安泰だと思っていた老後が崩壊するとは思ってもみなかった森さん。「2,000万円の貯金があるから、仕事を辞めても大丈夫」と結論に至った自分を悔やんでいるといいます。
――もう少し老後について一緒に語っていれば、違う展開になったかもしれません
株式会社LIFULLが行った『パートナーとの老後生活に向けた意識調査』によると、老後についてパートナーと話し合ったことがある人は約6割。残り4割は、「話し合ったことはない」と回答しています。またパートナーとの老後の暮らしについて聞くと「できるだけ二人で長く暮らしたい」が76.8%と圧倒的多数である一方、「パートナーと関係を維持しつつ元気なうちから別居したい」は5.9%、「パートナー関係を解消したい」は4.6%。夫婦の1割ほどは老後を前に不穏な空気に包まれているといえます。
果たして、自分たち夫婦は……定年前に確認しておいたほうがいいかもしれません。
[関連資料]