親であれば、子のためにあらゆることをしてあげたいと思うもの。それは高齢になったとしても変わりません。しかしどこかのタイミングでしっかりと「子離れ」をしないと、とんでもないことになってしまうようです。
愚かでした…年金「15万円」85歳母の後悔。〈働かない50歳ひとり息子〉に「月小遣い10万円」を渡し続けた20年の代償

10万円を渡し続けて、気が付けば息子は50歳…

はじめは、数週間、休めば部屋から出てくると思っていたという幸子さん。予想通り、1ヵ月ほどすると部屋から出てきて楽しそうにテレビを観たり、近所のコンビニに買い物に行ったりするように。ただ再就職に向けては後ろ向きだったといいます。

 

――本当に嫌な経験だったのでしょう。トラウマになっているかもしれないので、自発的に仕事を探すようになるのを待っていました

 

しかし、今となってはこのときの判断が間違いの第一歩だったといいます。気分転換で遊べるようにと、月々小遣いとして10万円を渡すように。多いと思うかもしれませんが、健太郎さんが仕事をしている間、「仕事が忙しくて使う暇もないし。母さん、使うなり、貯めるなり……お願い」と給与のほぼすべてを家に入れていました。それを本人に返す、という意味も込めていたといいます。しかし、このことが余計に働こうという意欲をそいでしまったと幸子さん。

 

――何もしなくても10万円もの自由に使えるお金が手に入るわけですから、当たり前ですよね

 

働こうとしない健太郎さんに、毎月10万円を渡し続けて、気づけば20年以上の月日が経っていました。5年前には幸子さんの夫も亡くなり、幸子さん自身も85歳に。亡くなった夫の遺族年金を含めて、毎月手にする年金は月15万円。そこから月10万円を渡し続けています。

 

健太郎さんも50代。まわりと比べても仕方がありませんが、50代といえば定年も見えてくる頃。家族がいれば、まだまだ子どもの教育費に住宅ローンの返済に、ひーこらいっている年齢でしょうか。そろそろ老後を見据えて資産形成を加速させないと……そんなことを考えているタイミングです。それが幸せとはとても思うことはできませんが、現状の健太郎さんをみていると、そんな大変なことでさえも幸せに思えてきます。

 

――私が甘やかすばかりに、息子の人生を台無しにしてしまった。家から追い出すとか、それくらいのことをしてもよかったのかもしれません

 

【「高齢の親と未婚の子の世帯」の推移】

1980年:89.1万世帯(10.5%)

1990年:127.5万世帯(11.8%)

2000年:226.8万世帯(14.5%)

2005年:301.0万世帯(16.2%)

2010年:383.6万世帯(18.5%)

2015年:470.4万世帯(19.8%)

2019年:511.8万世帯(20.0%)

2022年:551.4万世帯(20.1%)

※出所:厚生労働省『国民生活基礎調査』

※2020年はコロナ禍のため調査なし、(かっこ)内数値は65歳以上の者のいる世帯に占める割合

 

平均寿命を考えれば、そう悠長なことはいっていられない。今からでも、息子を突き放すか……幸子さん、大きな決断を迫られています。

 

 

[参考資料]

文部科学省『学校基本調査』

厚生労働省『国民生活基礎調査』