
折り合いのよくなかった父自ら「老人ホームに入る」と決断
池田直樹さん(仮名・45歳)。5年前に母が亡くなり、以来、実家には父・誠さん(仮名・79歳)だけが住んでいました。誠さんとの関係は「正直、よいとはいえない」のだとか。子どものころ、厳格だった父は何かと手を挙げることもあり、そんな父に猛反発……そんなしこりが、40代になった今でも残っているといいます。
そんな父が老人ホームに入居したのは、さかのぼること3年ほど前のこと。母(誠さんの妻)が亡くなり、ひとりで暮らしてきましたが、家事力のない誠さんは毎日四苦八苦。健康で元気であれば、そんな苦労も楽しみに変えることができたかもしれませんが、70代も後半になるとそんな気持ちにはなれません。限界を感じ、ひとり暮らしを放棄したという顛末です。
介護を必要としない誠さんが選んだのは、サービス付き高齢者向け住宅、いわゆる「サ高住」。自立した高齢者から住むことのできるバリアフリー賃貸住宅で、安否確認や生活相談のサービスが提供されます。自宅同様の自由な生活を送りながら、必要なサポートを受けることができると、近年、施設数も増加傾向。国土交通省の資料によると、202年12月末時点で全国に8,257件(285,267戸)に達しています。
入居者の介護度比率は、自立(健康)な人が8.6%。要支援が12.8%、要介護1が21.8%、要介護2が19.9%。自立している人、または介護度の軽い人が6割を占めますが、4割は要介護3以上で日常生活で常に介助を必要としている人。施設によって受け入れる幅は異なり、状況やニーズに合わせて選ぶことができます。
誠さんがこだわったのは「個室であること」「居室は家具付き」「居室に風呂がついていること」「夜間有人であること」「終身利用可で、看取り・ターミナルケアに対応していること」「駅チカ・交通アクセス良好であること」の6点。ポータルサイトでこれらの条件で絞り込むと、5件の候補がヒットしたため、すべて見学をして決定したといいます。
初期費用は50万円、月額費用は17万円。月々18万円、手取りにすると15万円強の年金を受け取っている誠さん。雑費も含めると、月々5万円ほど貯蓄を取り崩せばいい。費用的にもバッチリだったといいます。
――老人ホームに入るといったときは耳を疑いました。個室とはいえ、共同生活なんてできるような人ではないので。まあ、折り合いが悪い父とはいえ、最近は何かと心配していたので、ちょうどよかったです