60代。サラリーマン生活を終え、ゆっくり老後を……と考えていても、思わぬところで新たな出費が発生してしまうといったケースも十分に起こりうることでしょう。急な出費には働いて賄うしか選択肢がないという人も少なくありません。本記事ではAさんの事例とともに、60歳以降の継続雇用についてFP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
ローン完済・月収50万円の59歳父「贅沢せずにのんびり老後を」リタイア宣言も、前言撤回「死ぬまで働かなければ」…原因は〈実家制圧・出戻り21歳肝っ玉娘〉【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

継続雇用で賃金ダウン…「毎月最大4万5,000円を65歳までもらえる給付金」とは?

60歳で定年退職となった人たちのうち、再雇用制度などを希望して継続雇用となった人は実に87.4%となっています。今後も働き続ける高齢者は増えそうですね。

 

[図表2]60歳定年企業における定年到達者の動向

 

Aさんのように雇用の継続によって賃金がダウンしてしまう人は多いものです。そんな人たちが利用できる「高年齢雇用継続給付金」という制度があります。主な制度の内容は、

 

対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の労働者

支給要件:60歳時点の賃金の75%未満で雇用継続される場合

支給額:賃金の最大15%(毎月最大4万5,000円)を受け取れる給付金

 

というものです。たとえばAさんの場合、月収50万円の人が25万円にダウンする場合、25万円×15%=3万7,500円が毎月65歳まで支給されることになり、支給総額は、3万7,500円×12ヵ月×5年=225万円となります。最大月額の4万5,000円が受け取れる人の総額は4万5,000円×12ヵ月×5年=270万円となります。なお、この支給率は、賃金の低下率によって変わってきます。図表2の早見表を参考にしてください。

 

※支給率の計算には60歳の月額賃金は上限494,700円~下限86,070円が用いられますので、ご注意ください。
[図表3]「支給率早見表」 *支給率の計算には60歳の月額賃金は上限49万4,700円~下限8万6,070円が用いられますので、ご注意ください。

 

高年齢雇用継続給付金の申請は、基本的には会社が行ってくれるものです。しかし、担当者が制度を知らないと受給できない場合がありますので、事前に確認するようにしましょう。また、年金受給の方が高年齢雇用継続給付金を受給される場合は、年金事務所への届出が必要だったり年金の一部停止となったりすることもありますので、こちらもご注意ください。

 

この支給率ですが、令和7年4月以降新たに60歳になる人からは最大10%に縮小されます。さらに高年齢雇用継続給付金自体も時期は未定ですが、廃止も決定しています。前述の「高年齢者雇用安定法」改正等により、高年齢者が働きやすい環境が整いつつあることが廃止の理由とされています。

 

高年齢者も働くのが当たり前の時代になってきました。若いうちからマネープランのほか、生涯の働き方についても考えておきましょう。

 

〈参考〉

※ 厚生労働省令和5年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果

https://www.mhlw.go.jp/content/11703000/001191169.pdf

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表