年収798万円以上の会社員を対象に、厚生年金保険料の引き上げが検討されています。これは、年金制度を維持するための苦肉の策といえますが、対象者からは不満の声も上がっています。本記事では、今回の年金改革における保険料引き上げの背景と影響、そして年金制度全体の課題について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
「高所得層」月収70万円の53歳サラリーマン、年収798万円以上の会社員の厚生年金保険料増額に激しい憤り…厚労省の年金改革がもたらす「暗すぎる日本の将来」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

月収70万円のサラリーマン、年金改革への憤り

Aさんは月収70万円で部長職に就いている53歳の男性です。住宅ローンに2人の子どもの大学費用などお金もかかる時期でもあります。

 

先日「年収798万円以上(賞与を除く)の厚生年金保険料がアップする」というネットニュースを見ました。「また上がるのかよ! 年金制度を無理やり維持させるために負担ばっかり大きくなってたまらないよ。手取りが減って、こっちは高所得者と言われるような生活なんてしていないのに!」と憤慨しています。

 

2024年度は5年に一度、公的年金の財政状況がチェックされる「財政検証」の年です。これにより、年金改革がどのように検討されているかを見てみましょう。

「2025年問題」より厳しい「2040年問題」

団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる「2025年問題」。70代後半ともなると、大病を患いやすくなってくる時期です。医療費や介護費がかさむと懸念されており、社会保障制度にも大きな影響を与えます。今後、日本は超高齢社会による労働・医療・介護・年金といったさまざまな問題が表面化されてきます。

 

しかし、この「2025年問題」よりもさらに深刻なのが、「2040年問題」です。すでに50代を迎えた団塊ジュニア世代が65歳となるころで、高齢者人口は約4,000万人、総人口に占める高齢者の割合は過去最大の約35%に達するとされています。

 

さらに問題なのは、この団塊ジュニア世代は「就職氷河期」の人たちであり、正社員になれなかったり、正社員に採用されたとしても「失われた30年」を社会人として過ごしてきたためにリストラや役職定年など、親の団塊世代に比べると厳しい時代を生きてきたりした世代です。収入が低いと老後の年金は当然低くなりますし、退職金もバブル崩壊以降は1,000万円以上も減り続けている状態です。結婚したくてもできなかった人もいるでしょう。

 

日本の将来は、貧困に苦しむ独居老人が大量に発生するリスクを抱えているのです。「失われた30年」というワードがありますが、これからの日本は超高齢社会による問題であと30年は悩まされるのです。