仕事が第一の現役時代。定年後は、それまで支えてくれた妻に尽くさないと……そう考えている人は多いのでは。しかし夫婦で老後の生活をいろいろと思い浮かべても、誰もがその夢を叶えられるとは限りません。さらにその先に、とんでもない未来が待っていることも。
「定年後は世界中を旅しよう」と約束も〈年金22万円〉65歳男性、愛する妻が突然死。さらに〈退職金2,800万円〉が6ヵ月で枯渇…原因は亡き妻の面影をみた自称45歳女性の存在 (※写真はイメージです/PIXTA)

65歳シニア「マッチングアプリ」で趣味友探し…見つけたのは亡き妻に似た女性

――あまりに私が生気を失っていたので、すごく子どもたちに心配をかけました

 

美登里さんを亡くして数ヵ月間の記憶はあまりないという修さん。それでも定年時に受け取った退職金2,800万円に、夫婦で築いた貯金が3,000万円。さらに美登里さんの定年退職金も含めると、「一軒家をキャッシュで買ってもお金が余る」というほどの貯蓄があり、さらに年金は月22万円を受け取っているといいます。

 

――これからの生活でお金の心配はない。美登里と一緒に行った気になって、世界でも旅をしようか……

 

そう考え、3ヵ月ほどヨーロッパを旅して帰国した修さん。旅先では同じように妻を亡くした同年代と出会い意気投合したとか。新しい出会いで前向きになり、新たにいろいろと挑戦してみようというやる気が湧いてきたといいます。そこで始めたのがマッチングアプリでした。

 

――同じ趣味の友人を見つけるのにいいよと、マッチングアプリを勧められました

 

同じように、世界遺産を巡るような友人がいたら、もっと旅が楽しくなるに違いない……始まりは純粋なものでした。しかし、そこには大きな罠が……ある日、清水さんが気になったのは、ひとりの女性。プロフィールをみると45歳と20歳ほど年下。通常であれば「年齢が離れていたら話が合わない」とスルーするところ、この女性の場合は違いました。

 

――美登里に、どことなく似ていたんです

 

ふたりはマッチングし、メッセージのやりとりが始まりました。旅好きと共通項があり、亡き妻の面影をみる女性に思いを寄せるまで、それほど時間はかかりませんでした。そしてお互いにパートナーがいないということで、女性のほうから告白してきたといいます。

 

20歳も若い女性からの告白。戸惑いつつも有頂天になった清水さん……この流れ、他人であればすぐに怪しいと感じるかもしれませんが、当の本人は思わないもの。ここからはよく耳にする通り。初めは「故郷の母が病気で」と少額の金銭の要求から始まり、次第に高額になっていきました。しかし、何十年ぶりかに恋してしまっている清水さん、疑うことは一切、ありませんでした。そして女性に貢ぎ続け6ヵ月。その総額は清水さんの退職金がなくなるほどに。そしてある日、突然女性はネット上から姿を消えてしまいました。

 

――やはり私は騙されたのでしょうか。いまだに信じることができません

 

警察庁の資料によると、2024年の上半期において、ロマンス詐欺の被害件数は5,068件、被害総額は660億2,000万円に達しました。この数字は前年同期の約4倍に相当し、特に高齢者が多く巻き込まれています。またロマンス詐欺の被害者の約80%は40代以上であり、特に65歳以上の高齢者は全体の25%を占め、被害額も大きいのが特徴です。

 

また株式会社Parasolが行った調査によると、60代以上の会員1.2万人について、80%は婚姻歴あり、さらにそのうち8割が「再婚目的」で利用。またシニア世代は恋愛に積極的で、「マッチング後にまずは会いたい」という人は20代の3.8倍だったといいます。

 

このようなシニアの特徴を悪用したロマン詐欺。今後も増加の一途を辿るだろうと、警鐘が鳴らされています。

 

 

[参考資料]

厚生労働省『令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況』

警察庁『令和6年11月末におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について』

株式会社Parasol『シニア1.2万人のマッチングアプリ調査!再婚目的が8割』